IC/LSI用パッケージ外形の変遷(図)
外形標準化を進めた結果、標準パッケージの生産の中心は台湾・韓国など東南アジアにシフトして行くことになった。日本はより高密度実装が可能な小型表面実装技術としてCSP技術を開発の中心とした。 素子機能を最小小型外形で電子システムを構成出来るCSPの開発により、携帯電話などの小型情報機器が市場に登場することになった。
小型形状でありながら放熱性が高いパッケージ実装方式が日立製作所で開発された。MCC(Micro Chip Carrier)は、10~12mm□のムライトセラミック基板にLSI素子をはんだボール接続し、 裏面にははんだボールを0.45mm間隔格子で528個付けて、モジュール基板に実装する水冷冷却方式で、CSPの先駆けのパッケージになった。
1991年1月日本IBM社から、コストの高い多層セラミック基板に替えて、高精細な配線パターンを形成出来るビルドアップ方式を用いたプリント配線基板に、LSI素子をフリップチップ接続方式によってダイレクト実装する技術が発表された。 基板のセラミックから樹脂への変換による低コスト化、タングステン配線から銅配線への変換による高性能化によって、低コスト高性能パッケージの基本技術となった。
TIと日立は、ITC法廷闘争後に、DRAM開発プロジェクト(GT:Got Together プロジェクト)を進め、16M DRAMにLOC(Lead On Chip)構造を採用したことを日経マイクロデバイスに発表した。 リードフレームをDRAM素子の上に配置したLOC構造は素子の微細化技術によるチップサイズ変更が容易であること、多ビット展開が行い易いこと、高速電送が可能であることなど多くの利点があり、 その後のDRAMパッケージの基本技術となった。
1992年、松下電子工業は、LSI素子に金線スタッドバンプを形成し、それをセラミック基板にフリップチップ接続する小型のLGA(Land Grid Array)を量産し、携帯電話などのMPUに適用した。
多層プリント配線基板にLSI素子を搭載したCOB構造において、COBに設けた裏面端子にはんだボールを付けたBGA(Ball Grid Array)開発された。BGAはその後ボールピッチの狭ピッチ化が進みFBGA(Fine pitch BGA)として 携帯電話用LSIに多用された。
米国が主導していた多数個のLSI素子を配線基板上に並べて配置してからワイヤーボンディングで接続しシステムの統合を行うMCM(Multi Chip Module)の考えより、素子の機能を100%引き出し外形最小になるように設計したCSPが、 高機能電子機器の実装に適することをSEMIで説明した。以降世界のパッケージの開発がCSP中心に行われるようになった。
1996年シャープより、ポリイミドテープを用いたTABテープ基板採用でテープの下面ではんだボールを付けた構造のCSPの量産が開始された。
1997年富士通より、樹脂でバンプを設けその先端にめっきで形成された接合端子を持つ構造のBCC(Bump Chip Carrier)が開発された。
1998年松下電子工業(株)よりリードフレームを用いた片面モールド外形で、パッケージの下面に接続端子を持つQFN(Quad Flat Non-Lead)パッケージが量産開始された。
シャープはSRAMやフラッシュメモリなどのメモリ素子を重ねる素子積層型のスタックドCSPの量産を開始し、三菱電機とスタックドCSPの協調開発も進めた。同年同様の構造は富士通・NEC・東芝からも発表され、 メモリ素子積層型MCP(Multi Chip Package)など多段積層型CSPの開発競争が始まった。この頃LSI素子を多段実装するパッケージング手法をSiP(System in Package)と呼称するようになり、SiP手法を用いたシステムLSIの 開発が開始された。
1998年日立電線㈱は、液晶表示などフラットディスプレイパネル(FPD)を駆動するLSI素子をTABテープにフリップチップ接続するCOF(Chip On Film)構造を提案した。COFはそれまで使っていたフィンガーリードが無いので、 LSI素子のバンプピッチ縮小化が図られ多ピン化と生産歩留向上が両立されることになった。
プリント基板関係の学会で構成されたプリント基板加工学会などが母体となり、半導体パッケージ関係技術を中心として研究するエレクトロ二クス実装学会が創設され、学会誌が発刊となった。 半導体関連の接合技術・材料技術・シミュレーション技術など大学からの研究論文発表なども多くなった。
前工程プロセスとパッケージング技術の融合が進められ、スタートした。その一つとしてWL-CSP(Wafer Level Chip Scale Package)の開発がある。これはウェーハプロセス処理後にプリント基板への接合機能を、 銅めっきなどめっき配線技術を用いてウェーハ上で完成させる。この構造は、パッケージ製造工程を前工程で実現できるので低価格であり、端子数が少ないアナログ系の携帯電話用ICなどに適用された。
日立電線は日立製作所と共同で、米国Tessera社から同社の開発したμBGA(R)構造の技術導入後、構造・製法・装置を見直し、TABテープで形成された金メッキ銅リードをLSIのアルミ電極にリード接続する 接合方式・応力干渉膜に微細穴構造を持つ接着材付きテープ技術採用・連続トランスファー成形などを独自開発し、リールツウリール生産方式でCSPの量産を開始した。
超先端電子技術開発機構(ASET)に高密度三次元積層実装研究を行う電子SI(System Integration) 研究プロジェクトが設定され国家プロジェクトとして5年間の研究が行われた(1999~2003)。 シリコン基板に貫通穴を開け銅めっきで素子表面と素子裏面にはんだ接続する端子を持つTSV(Through Silicon Via)構造のCCDが試作され、CCD素子の下面にはんだバンプを設けた構造などが三洋電機で完成した。