IC/LSI用パッケージ外形の変遷(図)
1980年代に入ると、カスタムLSIからマイコンやメモリの時代になり、低コスト化や携帯型電子機器への要求が強くなり、日本を中心として表面実装型パッケージ技術が確立され、EIAJやSEMIの標準化活動を通じて、 パッケージ外形の標準化、材料・装置の標準化が進んだ。
多層配線セラミック基板で高放熱表面実装型FPG160ピンが開発された。パッケージをプリント基板実装後、アルミの放熱フィンが取り付けられ、空冷方式でLSIを冷却する大型計算機に使われた。
家庭用ビデオカメラ一体型VTR搭載用に小型表面実装型パッケージMSP(Mini Square Package)が開発されアナログICなどが搭載された。このパッケージは、リードピンをプリント 配線基板に垂直に近い形で実装出来るので、 実装面積の縮小化が実現され、ビデオカメラの小型化に寄与した。
プリント配線基板のLSI搭載部をルーターで窪ませてLSI素子を埋込実装する技術が開発され、デジタル腕時計・テレホンカード・体温計などの小型電子機器が開発された。LSIに樹脂基板適用の道が拓かれることになった。
各種形状の表面実装型パッケージが開発されたが、プリント配線基板へのはんだ付け実装方法が不統一であったので、日本電子機械工業会(EIAJ)の半導体外形委員会などが中心とした啓蒙活動により、 はんだ付け方法・材料・装置などの開発を進め表面実装技術(SMT: Surface Mount Technology)が確立した。
表面実装型パッケージの量産拡大に伴い、プリント配線基板へのリフローはんだ付け法が開発され、この事によりパッケージ外形を構成している樹脂の破壊や金線破断の不良が顕在化するようになりLSI素子やリードフレームの 密着性確認をする超音波探傷法が開発された。
樹脂封止型パッケージの信頼性試験において最大の課題は、ボンディング周りのアルミが腐食するという不良であった。不良原因を究明の結果、樹脂材料に添加するフィラーやリードフレームなどの部品や 製造工程での不純イオンが混入にあることが解り不純イオンの工程管理が行われた。この試験法導入後、樹脂型パッケージの品質信頼性が上がり、マイコンやメモリなどLSI素子にも採用されるようになった。
日本で開発されたQFPを世界標準にするため、電子機械工業会から半導体パッケージの国際学会IMC(International Microelectronics Conference)でQFPの設計概念と優れている点などが発表され、 多ピンパッケージとしてQFPが存在することが海外に初めて報告された。
日韓勢によるDRAM市場独占の脅威を感じた米国は、TI社のDRAM特許を無断使用しているとして、日韓9社が製造したDRAMに対して、輸入差し止め請求訴訟を国際貿易委員会に行った。これに対して、各社はPLCC構造は、 JEDECなど標準化委員会で審議されていること、製造方法が異なることなどを説明し、和解交渉の作業をへて64kDRAMなどの生産が継続された。
松下電器産業(株)は、TAB方式採用して10“カラー液晶表示テレビを発売した。TAB適用LSIと液晶表示パネルの透明電極ITO膜へは、樹脂中に金属微粉末を分散させた異方導電フイルムにより接続する方法が採用された。
QFPなど日本で開発されたパッケージ技術を世界に広めるために1985年頃より電子機械工業会(EIAJ)が標準化活動を活発化させ、第1回日米半導体パッケージ合同委員会をハワイ島で開催した。 日本はパッケージ名称記述法、外形寸法記述法、mm表示基準などを提案し、軍用規格担当部門などを説得して米国のInch寸法基準をmm基準で設計することを承認させた。この年SEMIジャパンのSEMICONのSTSのセッションにパッケージ技術を 発表する場が設定された。
樹脂型パッケージの厚みが1.0mmと薄いTQFP(Thin Quad Flat Package)が日立から開発された。その後、DRAMやSRAMなどメモリデバイスにも適用され、電子機器の小型軽量化が図られた。
DRAMの高密度実装技術としてDRAM素子上にリードフレームを配置して金線接続するLOC(Lead On Chip)構造が日立製作所より開発され、表面実装型SOJやピン挿入型ZIP(Zigzag In-Line Package)などが提案された。
日立製作所は、LSI素子の高速化やピン数の拡大に伴いリードフレームの信号ノイズが課題になりリードフレームの下面にグランド層を形成する2層構造のQFP208ピンを開発し、大型電子計算機用LSIなどに適用された。