1970年代後半

縮小投影露光装置

〜装置・材料/リソグラフィ〜


1978年、縮小投影露光装置(以下、ステッパーと呼ぶ)が登場した。フォトマスクを用いずに、レチクルのパターンをウェーハに直接縮小露光する方式である。同年、GCA(Geography Corporation of America)が10:1ステッパー(4800 DSW)の販売を開始した。同年、ニコンも超LSI研究組合に10:1ステッパー(VL-SR2)を納入した。縮小投影方式のウェーハ露光の幕開けである。

縮小投影露光の基本方式は、1959年にFairchildのJay LastとRobert Noyceがプレーナープロセス開発に使用したステップ・アンド・リピートカメラによるリソグラフィ[1]と同様であり、ステッパーはこれを元にしてGCAが製造したフォトマスク製造用のフォトリピーター[2]と同様の原理である。1960年代にフォトリピーター用の投影レンズを納入していたニコンがGCAにウェーハ露光方式への適用を手案した経緯がある。キヤノンも1973年に解像度1.5μmの1/2縮小投影露光装置(FPA-120)を開発し、さらに分解能が0.8μmのレンズを用いた手動式の1/4縮小投影露光装置(FPA-141)を発表した。しかし縮小投影露光方式は1チップ毎にステップ・アンド・リピートしてウェーハ露光するために生産性が低く、1960、70年代はフォトマスクを用いたウェーハ一括露光(コンタクト露光[3],・プロキシミティ/プロジェクション露光[4])が主流であった。

1980年代に到来が予想された1μm以下の微細化を前にした1970年代後半に、再び縮小投影露光方式への関心が高まり、超LSI 研究組合やIBMで研究開発が進められた。GCAのステッパーはIBMの実証検証結果に基づいて開発された。フォトリピーターと同様にウェーハをステップ・アンド・リピートして数チップずつ露光するために、ステッパーと呼ばれた。フォトリピーターとの大きな違いはウェーハとマスク(レチクル)との位置合わせが必要なことであり、光軸外(off-axis)の位置合わせ機構が搭載された。さらに、光源には水銀ランプの輝線436nmのg線が用いられ、サイツ製のNA(開口度)が0,28のg線投影レンズが使われ、1.3μmの解像度が実現された。この装置は世界の半導体デバイスの主要メーカーに納入され、縮小投影露光法による半導体製造が始まった。

このステッパーの解像度は同時期の先端のプロジェクションアライナー[4]と大差なく、生産性は劣っていた。プロジェクション露光法に比べて圧倒的に優れていたのは欠陥密度の低減能力であった。たとえば、一括露光方式ではフォトマスク上の1μmの塵埃はウェーハで解像されて欠陥になるが、レチクル上の1μmの塵埃はウェーハ上では1/10の0.1μmとなり解像されずに欠陥とならない。このためステッパーは将来の微細化に向けた期待と共に欠陥低減に有力な露光方式として普及し始め、1980年代以降のステッパー時代を迎えることになった。


【参考文献】
[1] 半導体歴史館:1959年:ステップ・アンド・リピートカメラ
[2] 半導体歴史館:1960年代:フォトリピーター
[3] 半導体歴史館:1960年代: コンタクト露光装置
[4] 半導体歴史館:1970年代:プロキシミティ露光装置およびプロジェクション露光装置

 

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