LSIはすべての電子機器に搭載されるようになり、LSIが電子機器の機能を実現する時代となった。半導体は電子機器にとってなくてはならないインフラとなり、 ソフトとハードが一体化したプラットフォーム型の開発が広がった。 電子機器ごとに機能の多様化が進み、ひとつひとつの技術の開発のみならず、どのようなLSIを作るかという製品企画力やマーケティングの重要性が増大していった。
微細化の進展と多値技術によりNANDフラッシュメモリの大容量化は着実に進み、1Gビットの時代に遂にDRAMの容量を追い越し、2010年には64Gビットの製品まで量産されるようになった。 大容量化に伴い、デジタルカメラ、ポータブルプレーヤ、携帯電話、USBメモリなど新しい需要が拡大し、フラッシュメモリは全盛時代を迎えた。
2000年以降、携帯電話やデジタルTV、カーナビなどのシステム規模が増大し、SoCは1000万ゲートから数1,000万ゲートという巨大なものとなった。 SoCというハードウェアだけでなくソフトウェアも巨大化したため、このようなシステムを如何に効率的に開発するかということが大きな課題となった。 その解決策としてプラットフォーム型の開発手法が発展した。
新しいメモリのひとつとして、メモリセルに磁性体を用いた磁気抵抗メモリ(MRAM: Magnetoresistive RAM)や、カルコゲナイトを用いた相変化メモリ (PCRAM: Phase Change RAM)、遷移金属酸化膜の抵抗変化を利用した抵抗変化メモリ(ReRAM: Resistance RAM)など、種々の不揮発性メモリが提案され、 開発が進んだ。
微細化が進んで製造の難度が上がったため、その対策として設計と製造の連携技術が発展した。ひとつは歩留向上のノウハウをチップ設計に フィードバックしてルール化するDFM(Design for Manufacturability)技術であり、もうひとつはテスティングを容易にするバウンダリ スキャン技術やBIST技術のDFT(Design for Testability)である。
2000年に入ると、従来のシリコン上の平面型MOSトランジスタ構造では微細化の限界が早晩来るとして、Si膜を極端に薄く形成したUTB (Ultra Thin Body) SOI素子、FINFET、マルチゲート・トランジスタなど種々の新構造素子の研究が盛んになった。また、カーボン ナノチューブ、グラフェンなど、全く新しい材料による素子動作の可能性も追求されるようになった。
DRAM/SRAM/フラッシュ以外の新しいメモリであるFeRAM(Ferroelectric RAM)は、強誘電体の基礎研究・開発に長い時間がかかった。 ロームや松下電子、富士通からFeRAMメモリ(FRAM)が発売されたあと、2001年富士通からFeRAM混載ICカード用LSIが発売された。 続いて松下電子(現パナソニック)からも2003年にFeRAM混載ICカード用LSIが発売された。
東芝は、画像認識プロセサのVisconti™第一世代T5BG3XBGを開発した。この製品はRISC(Reduced Instruction Set Computer)とVLIW(Very Long Instruction Word)コアで構成されるMPE (Media Processing Engine)3コアと画像処理アクセラレータを搭載したマルチコア構成のプロセサで、 先進運転者支援システム(ADAS)を想定して開発されたものである。
東芝、IBM、ソニーグループは、Cell Broadband Engine (Cell/B.E.) を共同開発した。Cell/B.E.は、1個のPowerPCアーキテクチャをベースにした64ビット汎用コアと 8個の128ビットマルチメディア処理用演算コアを備えた高度な並列演算機能を有 するマルチコアプロセッサだった。Cell/B.E.はソニーのゲーム機プレイステーション3 に搭載され、のちに東芝のデジタルTV(<CellCELLレグザ>)にも採用された。また、 IBMのスーパーコンピュータRoadrunnerにも搭載された。
プロセッサの高性能化は、その周波数を上げることによって実現されてきた。 しかし、 チップ消費電力の上昇によってこの手法は限界に達した。新しい解決策として登場したのが、1チップに複数のプロセッサコアを集積した、 「マルチコア方式」である。これは複数のコアを並列動作させることにより、高性能化と低消費電力化との両立を図るものである。 IBMのPOWER4に続いてIntelのPC用のPentiumプロセッサ、エクストリーム・エディション 840やCore Duoが開発されたが、日本メーカでは ルネサステクノロジがデュアルコアのSH2A、SH4Aを開発し、NECエレクトロニクスがV850E2Mを開発した。