1990年代後半
LCDドライバ(液晶用ドライバ)の発展

~集積回路~



1990年代になると低消費電力・小型・薄型の特長を生かし、液晶表示がノートPCに採用されるようになりLCDドライバ(液晶表示用ドライバ)の需要が増加した。更に90年代末には携帯電話の小型化・メール対応などでLCDドライバは大きく発展した。この発展には、実装方法と高耐圧プロセス微細化、カラー対応が貢献している。

80年代までの液晶表示はセグメント表示やドットマトリックスによるキャラクタ表示が主流であり、ワンチップでSTN(Super Twisted Nematic liquid crystal)液晶駆動可能な日立のHD44780に代表されるセグメント表示品が家電製品などに使われていた。一方、表示領域を数字からドットマトリックス、画像表示へと拡大するには画素毎に必要とされる駆動端子の増大が課題であった。液晶表示は対抗する電極に挟まれた液晶に電界を印加する構造を持っており、表示するセグメント桁数やドット数を増加させると液晶を駆動する出力本数が大幅に増加する。従来のQFPパッケージでは液晶駆動用に出力端子を数十本程度しか確保出来ず、液晶駆動用LSIを複数使う必要があり、応用製品の広がりが限られていた。

90年代になると、液晶駆動LSIをフィルム上に実装し狭ピッチで数百ピンの出力を取り出せるTCP(Tape Carrier Package)実装技術が確立・量産され、液晶の応用に大きな変化が生じた。これまでのQFPパッケージからTCPパッケージにすることで、300出力以上の端子を一つの48mm幅のフィルムのTCPパッケ-ジで実現。ノートPCやモニターのVGA(640x480ドット)・XGA(1024x768ドット)表示などに採用された。TCPパッケージではフィルム上に銅箔で配線した端子とLSIチップ(パッド端子に金バンプ処理)の全端子を一度に圧着実装する構造をとることで、小型多ピン実装が可能となった。384ピン出力を1ケのTCPパッケージで実現でき、パネル当たり10~12ケ使うXGA(1024x768ドット)表示のノートPCやPCモニターに採用された。この結果LCDドライバは年間10億個の需要に発展した。

液晶表示も白黒表示から多諧調グレー表示、カラー表示へと進展したが、LCDドライバも高耐圧駆動を維持しながらも微細プロセス化により高性能・高精細・カラー化対応を果たした。特に、液晶パネルのTFT(Thin Film Transistor)化では表示特性が大きく向上した。STN液晶方式に比べて、1画素毎に駆動するトランジスタをガラス上に構成するTFT液晶方式でコントラストや応答速度などの表示性能が大幅に向上した。また、LCDドライバも、40V振幅を駆動するコモンドライバLSIと5V振幅の階調データを駆動するソースドライバLSILSI、電源LSILSIに分離されるようになった。このなかでカラー化の色諧調を制御するLCDドライバは日本の得意技術で、需要が急激に増加した。

液晶PCモニターが増加するに従って90年後半から韓国・台湾が液晶パネル事業に参入し、日本から購入していたLCDドライバも90年代末には韓国・台湾メーカーの生産が立上り始めた。

一方、90年代末からの携帯電話の急激な増加により、LCDドライバにとって中小型液晶と言う一つのカテゴリができるまでになった。初期には携帯電話の番号表示に使われる程度だったのが、ショートメールのサービスの開始、99年にはNTTドコモによるi-modeサービスの開始、その後カラー液晶表示携帯の発売、カメラ付き携帯の出現などによって、液晶パネル・LCDドライバは急成長を遂げた。携帯電話では小型実装のためにベアチップを液晶ガラスに直接実装するCOG(Chip on Glass)実装が採用され、2000年代になるとカラー液晶表示の携帯電話用LCDドライバが大きく発展した。この小型液晶の分野は年間10億個以上の規模に成長した。


図1 TCP実装例
(写真提供 日立製作所)



図2 COG実装例
(写真提供 日立製作所)



【参考文献】


【移動ページ】
集積回路/該当年代へ


【最終変更バージョン】
rev.000 2011/1/28