1985年
ICカード用EEPROM内蔵マイコン開発(日立)

〜集積回路〜



磁気ストライプ方式カードの問題点である情報の安全性や容量不足の抜本的改善を目指して、1970年代の後半ころ欧州や北米でICカードの開発が始まった。1985年に、日立は国内で初めて電気的に書き換え可能な不揮発性メモリとCPUを搭載した接触型ICカードマイコン65901を製品発表した。65901には専用に開発された8ビットCPUと信頼性の高いMNOS型不揮発性メモリが搭載された。金融用途が想定されるICカードマイコンでは情報セキュリティとメモリデバイスの信頼性が特に重視されたためである。また、1988年にはソニーがアンテナを内蔵した非接触型のICカードを開発している。

ICカードは、その用途が金融、通信、交通など情報社会のインフラに関わるので、耐タンパー性などの情報セキュリティとインターフェース仕様の標準化が特に重要になる。情報セキュリティ面では、DESやRSAなどの高度な暗号技術が採用されるようになり、搭載CPUの処理性能向上や搭載メモリの高容量化が進んで、CPUは16ビットや32ビット、メモリは256Kバイトから1Mバイトを搭載したものも開発されている。また、ICの設計面では、動作中に発生する電波信号分析や物理的なチップ分解などの違法手段による情報漏洩の防止対策について細心の配慮がされている。また、インターフェース仕様の標準化については、用途別にISOなど国際機関で仕様の標準化が確立している。

ICカードは、1980年代に欧州の公衆電話のプリペイドカード用途に採用され、その後、欧州のGSM携帯電話でSIMカードとして急速に採用が広がった。国内の携帯電話もこのSIMカードを採用している。金融決済用途では1980年代末から欧州の銀行での採用が進み、1990年代から銀行のATMカードやクレジットカードなどもICカード化が進展していった。また、1995年にはイギリスのMONDEXなど電子マネー用途の応用も広がっていった。交通分野では、1997年に香港で採用され、国内では2001年のSUICAからJR各社や私鉄、バスなどに急速に広まっていった。そのほかにもデジタル放送の課金システム、社員証や学生証などのIDカード、住民基本台帳や保険証などICカードの用途は社会全体に広がっている。

これらの各用途別で始まったICカードは、その後、SUICAやEDY、お財布携帯など相互に用途を広げ決済手段や電子マネー、交通機関や携帯電話などの日常生活の情報社会インフラを支えるきわめて重要な技術となっている。

図 ICカード用マイコンHD65901のチップ写真
(提供:日立)


【参考文献】
1) 「ICカード」『フリー百科事典ウイキペディア日本語版』(2010年10月7日16:04)
http://ja.wikipedia.org/wiki/IC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89


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【最終変更バージョン】
rev.002 2010/10/23