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1958年 半導体ICの発明(Jack Kilby、米国 TI) 〜集積回路〜 |
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TI社のJack St. Clair KilbyがモノリシックICのアイデアに到達したのは1958年7月24日のことであった。この日付からも分かるように、その日は夏の盛りであり、同僚のほとんどは夏休みをとっていた。当時34歳の彼は、入社して間もないために、休暇をもらうことができず、ただ一人実験室に残ることになったのであるが、世紀の大発明はこの時に生まれたのである。 その当時、トランジスタの発明から10年が経過し、半導体は軍需応用、コンピュータ、民生機器などいろいろな分野に拡がろうとしていた。システムが大型化し、複雑化するにつれて問題になってきたのが、部品間の相互結線の数の増大であった。その数の増大のために、システムの性能、コスト、信頼性、サイズのすべてが大きな制約を受けることになる。この問題は“Tyranny of Numbers” (数の暴威)と呼ばれ、産業界の共通問題として、いろいろな角度から対応策が進められていた。TI社においても軍との共同開発としてマイクロモジュール方式が推進されていた。この方式はトランジスタのような能動素子と容量、抵抗などの受動素子を基板上に高密度に取り付けることを基本としていた。Kilbyはこの方式に疑問をいだき、これを超える独自の方式について思案を重ね、その結果として「モノリシック集積」のアイデアに到達した。モノは一つの意味であり、リシックは石を意味するので、「モノリシック集積」は一枚の半導体基板上に全ての素子を集積するという画期的なアイデアであった。このアイデアをベースにして作られた発信器は同年9月12日にTI社の幹部が見守る中で見事に作動した。これを契機にTI社はマイクロモジュール方式に変えてキルビーが考案したモノリシック方式を本命として推進することにしたのである。 翌年の1959年にはFairchild社のRobert Noyceがプレーナ型のICを開発した。これは今日のIC構造の基礎となるもので、実用的な価値ははるかに高いものであった。そのため、「ICの発明はKilbyか? Noyceか?」の論戦が長く続いたが最終的には両者がその栄誉を分かち合う形で決着した。 2000年にKilbyは、IC発明の功績によってノーベル物理学賞を受賞したが、そのときNoyceはすでに他界していた。 |
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Kilbyが開発した世界初のIC (提供:日本TI) |
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【参考文献】 1) 桑原裕他編「MOT歴史の検証」 第5章「半導体産業における歴史の検証」(牧本次生) 2)Texas Instruments社HP「Jack Kilby が発明した世界初の集積回路」 http://newscenter-jp.ti.com/index.php?s=34129&item=12 【移動ページ】 集積回路/該当年代へ 【最終変更バージョン】 rev.003 2013/5/9 |