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1989年 アナログハイビジョン(MUSE方式)用LSI (各社) 〜集積回路〜 |
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ハイビジョン放送を放送衛星のトランスポンダ1波の伝送帯域で実現するために日本独自のMUSE(Multiple Sub-Nyquist Sampling
Encoding)伝送方式が1980年代にNHK主導で開発された。これはハイビジョンのベースバンド20MHz帯域をデジタル映像処理を駆使して8.1MHzまで帯域圧縮しFM変調で伝送するものである。 このMUSE方式によるアナログハイビジョン放送は1989年より放送衛星での実験放送が開始され、1991年に試験放送、1994年に実用化試験放送と切り替わり、実施された。ハイビジョン受信機でのMUSEデコーダは大規模なデジタル映像処理が中心となるため、その実用化と普及のためにはLSI化による大幅な小型化と低消費電力化が不可欠であった。ディスクリート部品によって構成されたプロトタイプのMUSEデコーダは約3800個のTTL、ECLよりなり、消費電力も約1kWのものであった。MUSE LSIの第1世代は1989年の実験放送開始に合わせ、NHKと複数の国内家電・半導体メーカー(東芝・日本電気・松下電器産業(現パナソニック)・ソニー・シャープ)により1987年から約2年の期間で開発された。MUSE LSIは高速ADC、DACと各種デジタル映像処理、画像メモリに、音声処理、制御データ検出、制御タイミング発生を加えて、全25種類にのぼった。デジタル処理用LSIはすべて5V単一のCMOS製造技術を採用し、動作周波数はADCが16MHz、デジタル映像処理部は32MHz、48MHz、DACは44MHzであり、デザインルールは1.2〜1.5μmと設計開始時における信頼性含めた最高水準の技術で実現された。 図1にMUSE LSIシステム構成を示す。MUSE方式では、画面の静止している部分は4フィールドで一巡するサブサンプリングを行い、画面の動いている部分は解像度を低下させて従来のテレビジョンと同様のフィールド単位の伝送を行っている。これを受信するMUSEデコーダの映像処理部の主要機能は次の3点からなる。 (1)4フィールドに渡ってサブサンプルされた画素を画像メモリによって内挿する(静画処理)。 (2)サブサンプルされた画素をフィールド内で2次元フィルタによって補間する(動画処理)。 (3)画像の動いている部分を検出し、その検出信号に応じて静画処理と動画処理の出力を混合する。(動き検出、静画/動画のミキシング) このほかに、時間圧縮された色信号の復調、同期/クロック再生、波形等化、及び音声復調などの機能を含めるとMUSEデコーダはおよそ3〜400kゲート、20Mbit程の規模のデジタル信号処理システムとなっている。 本LSIの開発により、MUSEデコーダは従来のプロトタイプに比べ、大きさ約1/20、消費電力約1/30と大幅に減少し、国内家電メーカー各社より小型のMUSEデコーダとデコーダ内蔵型のハイビジョン受信機が開発された。ただし第1世代デコーダの小型化・低価格化には大きな貢献があったが、量産性の面からチップ数が多くコストが高いことと、実装ボードの生産性に課題を残した。これらの課題を克服し、更なる高集積化を目指した第2世代LSIは1992年〜1994年頃にソニー+3社、東芝+1社、松下電器産業(現パナソニック)+9社などによりそれぞれ開発され、1995年以降には富士通、日本TIとソニーの共同、松下電器産業(現パナソニック)と日本ビクター(現JVC・ケンウッド・ホールディングス)の共同でそれぞれ1チップに集積されたものが開発された。 |
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【参考文献】 1) 二宮ほか:“ハイビジョン衛星伝送方式−MUSE−”,TV学会誌、Vol.42、No.5、(1988) 2) 小林ほか:“高品位テレビ受像機への応用”、TV学会誌、Vol.43、No.12、(1989) 3) 桜井ほか:“MUSEデコーダ”、TV学会誌、Vol.45、No.11、(1991) 4) 桜井ほか:“第二世代MUSE LSIの開発”、TV学技報、Vol.17、No.5、(1993) 【移動ページ】 集積回路/該当年代へ 【最終変更バージョン】 rev.001 2010/10/16 |