1960年代後半
民生用アナログICの製品化
〜集積回路〜



1960年後半から国内半導体メーカによる、アナログICの開発が始まる。P基板上に、PN接合で分離したNPN、ラテラルPNPバイポーラトランジスタ、拡散抵抗、小容量コンデンサを配置し、AL配線で結線した構造のバイポーラ形ICである。セットの小型軽量化、高信頼性、低価格化が目的。

民生用ICとして、商品化されたものに、1966年に開発されたソニーのAMラジオ用IC:図1が挙げられる。ソニーの超小型ラジオ:ICR100に使用された。小型化が目的であった。

1967年、1968年ごろには、トランジスタのペア性、高精度の抵抗比、高性能基準電圧源(バンドギャップ基準電圧源)などのモノリシックICの特徴を積極的に利用したリニアICが、相次いで開発された。    
主に、米国ICメーカの互換製品(FM用中間周波数増幅及びFM検波、TV用の音声中間周波増幅IC、映像中間周波増幅IC、自動周波数調整IC、クロマ復調用IC)であったが、独自設計によるものも出現した。(三菱電機:カーオーディオ OTL出力IC:M5102、松下電子:AN130、AM/FMラジオ用IC:三菱:M5105P、東芝:TA7046P、東京三洋:LA1201)

国内の大半の半導体メーカはセットメーカでもあるので、社内の技術、資金協力が得られ、また、安定した社内需要も確保出来た。さらに、1970、1980年代にはTV、ラジオなどの需要増大、日本メーカの世界シェアの上昇、加えて、ソニーのウォークマンに代表される携帯オーディオ、カセットVTRなどの新民生機器が続々と出現しため、この期間、アナログICの品種、生産は飛躍的に増加した。

アナログICのプロセス自体も大きく進化する。4μルールの微細プロセス、多層配線技術を経て、1980年代前半には、ポリシリコン抵抗、窒化珪素膜コンデンサ、I2Lを搭載した2μルールの微細プロセスを各メーカが開発し(1982年 東芝:ANSAプロセス。松下:LOPACプロセスなど)、その後のTV、VTR用ICの大規模化を可能とした。このプロセスを使い、カラーTV用1チップMSI(1985年三菱:M51307SP、東芝:TA7777P、1986年 松下:AN5155Kなど)が開発された。またこの微細化プロセスによる高周波特性の向上で、アナログICの適用範囲がGHz帯まで拡大、VHF帯で動作するTVチューナ用のICも出現した。(1979年 東芝TV VHF チューナ用IC:TA7635P)

図1 ソニーAMラジオ:ICR100に使用のAMラジオ用ICの等価回路1)
図2 ソニーが1966年に世界で初めて商品化した小型ラジオ用モノリシックICの外観8)

【参考文献】
1) ソニー、小林、清水、“超小型ラジオ「ICR-100」用半導体IC”、P.98-100、電子材料、1968年、10月号
2) 松下電器、伊賀、“民生機器への応用”、P.52-58、電子材料、1968年、10月号
3) 三菱電機技報、Vol.41,No.8,1967、PP.998
4) 橋本 菅雄 “カラーテレビ用信号処理1チップIC”、三菱電機技報・Vol.59、No.8, 1985 PP.561-564
5) “シングルチップカラーテレビ用バイポーラLSI (TA777P) ”、東芝レビュー、(40巻4号)、1968、PP.313
6) 沢崎 肇、他 “バイポーラICの新しい製造方法”、東芝レビュー(37巻3号)、1982、PP.184-188
7) 鳥居 憲一、他、“VHF・TV用IC化電子チューナ”、東芝レビュー、(35巻2号)1980、PP.120-124
8) ソニー株式会社HP「ソニー半導体の歴史」
http://www.sony.co.jp/Products/SC-HP/business/history.html


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【最終変更バージョン】
rev.002 2013/5/9