1984年
非ノイマン型データ駆動プロセッサImPPの開発 (NEC)
〜集積回路〜



1970年後半から始まったマイクロ・コンピュータの台頭は、当時大型計算機で指摘されていたフォンノイマン・ボトルネック(命令を低速な外部メモリへ格納することから生じる性能劣化)の存在を顕在化させる事となった。1984年、NECは上記ボトルネックを解消するため、可変長なパイプライン構造をリング型に接続し、命令の駆動を到着したデータ自身が指示して行うという画期的なデータ駆動方式を提案し、本方式を採用したアーキテクチャに基づくプロセッサとして6.93x6.99mm のダイ・サイズの上に1.75μNチャネル技術を用い11万5000トランジスタを集積したμPD7281(ImPP)を発売開始した。

本LSIは以下に示す特徴を有している。(1)16x16ビット乗算を含め全ての命令を200nsで実行する32種の演算命令を実装し、特にバレルシフトやビット操作命令など画像処理で効果を発揮する命令を充実させた。(2)データ駆動並びにパイプライン方式の採用により、ノイマン型アーキテクチャに内在する諸問題を解決することで当時主流の8086系プロセッサの10〜20倍の性能を達成することができた。(3)40ピンDIPパッケージを横に複数カスケード接続することで容易にマルチプロセッサ構成が実現でき接続個数に比例して性能を向上させることができた。(4)命令をLSI内部のRAMに格納することで種々のアプリケーションに対応することができた。

 これらの特徴は大量データに対して繰り返し演算処理が基本なデジタル画像処理やデジタル信号処理に適しており、256x256画像に対するアフィン変換で0.7s、階調変換処理で0.14s、64ビットTBFで50μsと当時の画像/信号技術の最先端をいくものであった。また本LSIはアーキテクチャの面からも革新的であったことから、同年のISSCC国際学会で発表されるとともに、新聞発表当日には一般紙の一面トップに掲載され反響を呼んだ。

本LSIは当初のターゲットどおりに画像処理分野で注目をあび、印鑑照合、指紋照合などの分野で多くの製品に採用され、デジタル画像処理市場立ち上げに貢献した。
図1 非ノイマン型データ駆動プロセッサ μPD7281 のチップ写真
(提供:ルネサスエレクトロニクス)

図2 非ノイマン型データ駆動プロセッサ μPD7281 のパッケージ写真
(提供:ルネサスエレクトロニクス)


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.001 2010/10/16