1980年
ワンチップデジタル信号処理プロセッサの開発(NEC)
〜集積回路〜



半導体集積技術が進歩し高速化、高集積化が進むと、音声帯域を処理できる信号処理プロセッサが可能となった。NECは世界に先駆けて信号処理に必要なほとんどの機能を集積したデジタル信号処理プロセッサ(μPD7720)を開発・量産出荷を行った。このプロセッサが出現するまではデジタル信号処理を行おうとすると、高速乗算器、高速メモリなどを個別のディスクリート部品を集めて構成する必要があった。特に乗算器は200ns程度で16ビットを乗算するものは十10ワット近くの電力を消費し、値段も数万円でとても民生機器には採用することが出来なかった。

このプロセッサは16ビットの乗算を含むすべての16ビットの演算を25Onsで処理でき、ROM、RAMを含むプロセッサ全体の消費電力を1W以下に抑えている。また、2の補数であらわされた数値データを直接演算できるアークテクチャを採用している。

一般にデジタル信号処理は、@データと係数の乗算、A乗算結果の累算、Bデータの格納番地の移動をサンプリング周期ごとに行う必要がある。たとえば音声電話の品質を保つためには125μs毎に信号をサンプリングし、演算をこの時間内に終了する必要がある。この信号処理プロセッサでは乗算器として2次のブースのアルゴリズムを採用した高速並列乗算回路の採用、データと係数を別々なバスで乗算器に一度に転送可能、乗算と累算の同時処理、データ移動のための特別なアドレス回路などにより、高速処理が出来るように工夫されている。また、高信頼が必要とされる応用のため、サンプリング周期ごとに1クロックサイクルでリセットがかかるようになっており、プロセッサがハングアップしない応用にも対応できる。入力と出力には汎用PCMコーデックが簡単につながるようになっており電話音声帯域の信号処理システムが簡単に構築できるようになっている。
図 ワンチップデジタル信号処理プロセッサ μPD7720 の外観写真
(提供:ルネサスエレクトロニクス)


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.001 2010/10/16