1960年代後半
CVD酸化膜を低雑音化プロセスに応用

〜プロセス技術〜



従来シリコンを高温で酸化してシリコン酸化膜を表面に形成していたが、CVD法によってシリコン酸化膜を表面に堆積できるようになり、新たな応用が展開された。そのような応用の中で、日本の半導体が民生機器発展に大きく寄与する原動力の一つとなったのが、トランジスタやICの低雑音化技術であった。

日立は1966年、熱酸化膜を剥離して代わりにCVD酸化膜を付けて熱処理するLTP(Low Temperature Passivation)技術を開発した。CVD酸化膜を直接シリコンに付けるとその界面がシリコンと不整合になり(技術的に言うと、界面準位が多く)電気的な雑音のもととなるが、LTP技術では熱処理条件を最適化し界面準位を大幅に低減した。この技術によって低雑音トランジスタや低雑音ICが開発され、日本のオーディオ機器などのソリッドステート化に大きく寄与した。

東芝は1968年頃から、雑音の原因の一つである結晶欠陥を低減するために、CVD酸化膜を使って無欠陥拡散を行う技術開発に取り組んだ。Doped CVD酸化膜(拡散用不純物を含む酸化膜)を直接シリコン表面に堆積させ、この膜を拡散源として拡散を行う技術開発の中で、リンの他に適量のヒ素を含んだDoped CVD酸化膜を使うと結晶欠陥が発生しないことを見出し、1970年にPCT(Perfect Crystal Technology)技術として完成した。PCT技術によって低雑音トランジスタや低雑音ICが商品化されていったが、PCT技術においてもLTP技術と同様に、CVD膜を直接シリコンに付けるので熱処理条件の最適化がノウハウであったことから、界面準位の低減も低雑音化に寄与していたものと推察される。

LTP及びPCTともに、フェアチャイルド社のプレーナー技術を回避できた点も評価される。


a)          b)
a) 従来製法によるトランジスタ(結晶欠陥[縦横の線]が有る)
b) PCTによるトランジスタ(結晶欠陥が無い)
図 PCTによる結晶欠陥低減5)

【参考文献】
1) 日立グループの沿革と歴史:1961〜1980
  http://www.hitachi.co.jp/about/corporate/history/1960.html
2) M.Watanabe, T.Yonezawa, M.nakamura, T.Kato and M.Akatsuka: Inst. Electron, Common. Engrs. Japan SSD-7-13 (1970)
3) 東芝半導体事業35年史, p66


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【最終変更バージョン】
rev.001 2013/7/30