1970年代前半
イオン注入による閾値制御

〜プロセス技術〜



イオン注入装置では、V族のボロン(B)、X族のリン(P)、砒素(As)などの元素をイオン化し、高電圧で加速し、Si中へ注入する。注入される不純物の量はイオンビーム電流の時間積分で与えられる。注入されたイオンは、Si原子と衝突散乱を繰り返して停止するため、注入深さはイオンの質量と加速エネルギーに依存する。中電流イオン注入装置ではイオンビーム電流はマイクロアンペアオーダーであり、比較的低濃度の不純物を注入するときに用いられる。数KeV〜数100KeV範囲のエネルギーでイオンを加速することができるため汎用性が高く半導体デバイスの製造において多くの工程に適用されている。

1970年代に、MOSトランジスタのチャネル部にイオン注入することによるトランジスタの閾値電圧制御や、Isolation領域に注入することによるIsolation領域の反転防止(当時のNMOSの場合、ボロンを注入した後にIsolation用の厚い酸化膜を形成)に使われるようになった。

イオン注入装置の歴史をさかのぼると、その源は1950年代の粒子加速器に発している。1954年にW. Shockleyは半導体へイオン注入する特許を取得し、1969年にはHughes AircraftのK. G. AubuchonがMOSのチャネル部にイオン注入することにより閾値電圧を制御する方法を発表している。この当時のイオン注入装置メーカとしては、Ion Physics Corp. 、High Voltage Engineering、DANFYSIC、Accelerate Inc.などがあった。1971年に、Lintott、、Extrion、ORTECなど多くのイオン注入装置メーカが生まれたが、その後、Ion Physics Corp.がHigh Voltage Engineering に統合、ORTECはGCAに移り、ExtrionがVarianに吸収されるなど、装置メーカの分離統合が1970年代後半まで続いた。日本国内では、1974年に日新ハイボルテージが生産を開始、日本真空技術がExtrionと手を結び国産化に乗り出し、1982年には東京エレクトロンとVarianの合弁会社が設立された。


【参考文献】


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【最終変更バージョン】
rev.000 2010/10/8