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2007年 世界初有機ELテレビ発売(ソニー) ~個別半導体・他~ |
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1997 年にパイオニアは世界で初めて、キナクリドン(ゲスト)をドープしたアルミキノリノール錯体(Alq3)(ホスト)を発光層に使用した、緑単色の有機 EL フラットパネルディスプレイを商品化した(1)。有機 EL は、ゲスト材料とホスト材料の組み合わせで、発光色を変えることが出来る。フルカラー表示に必要な光の 3 原色(RGB)を発光するホスト・ゲスト材料の組み合わせが種々見つかり、フルカラーディスプレイの開発が、出光興産、TDK など多くの企業で活発に進められた。当初は蛍光発光を利用していたため、EL 素子の発光効率は 5%程度の低いものであった。1998 年に S.R. Forrest が、ドーパントとして白金ポリフィリン誘導体やイリジューム錯体を用いることで燐光発光が可能なことを発見した(2)。これを発展させて、発光効率が 20%を超える光 3 原色の燐光を発する材料が種々開発された。 2001 年に、NEC の 2.2 型フルカラーパッシブ型有機 EL ディスプレイ(120x(RGB)x160 画素)が、NTT ドコモの、世界初の商用3G(第 3 世代移動体通信:W-CDMA 規格)サービス「FOMA」に対応した最初の端末「N2001」のメインディスプレイに搭載された(3)。パネルは、サムスンと NEC が共同設立した、サムスン NEC モバイルディスプレイ(株)が製造した。携帯電話端末に世界で初めて採用された有機 EL ディスプレイである。(2000 年にモトローラの携帯電話に有機ELディスプレイが採用されたとの説もあるが確認できず。) しかし、「明るい場所では表示が見えづらい」、「ダークスポット(黒点)が発生する」など、さまざまな問題が発生し、全品回収され、液晶ディスプレイ(LCD)に置き換えられた。 パイオニアは、UDC、新日鉄化学と共同研究で、高輝度赤色燐光材料の開発に成功し、これまでの蛍光材料の弱点を克服した(4)。2003年11月に世界で初めて燐光材料を使用した有機ELパネル(パッシブマトリックス型、1.1インチサイズ、96xRGBx72画素、輝度:100 cd/m2)が、NTTドコモ携帯電話「ムーバ505iGPS」の背面(サブ)ディスプレイに搭載された(5)。パネルは、RGB発光層並置方式で構成され、有機EL層は、金属マスクを用いて真空蒸着で成膜された。 三洋電機とコダックは、液晶デイスプレイ(LCD)の低温ポリシリコン TFT 技術を活用して、業界初のアクティブ型フルカラー有機ELディスプレイの開発に成功した。2003年3月にコダックは、アクティブ型フルカラー有機ELディスプレイを搭載したデジタルカメラ(LS633)を発売した(6)。ディスプレイパネルは2.16型(対角58 mm)で、解像度(521x219画素)の画像を表示できる。RGB発光層並置方式を採用している。三洋電機とコダックが共同設立したSKディスプレイ(株)がパネルを製造した。 2007年12月1日にソニーは、世界に先駆けて有機ELテレビ「XEL-1」を発売した(7)。有機ディスプレイは、11 V型(251mm(w)x141mm(v)、対角 287mm)のアクティブマトリックス方式で、解像度QHD(960x540 画素)の表示ができる。パネルの厚さは最薄部ではわずか3㎜と極めて薄い。低温ポリSi TFT基板を採用しているが、画素回路ごとのTFT特性ばらつきを補正する補正回路を設けることで、輝度ばらつきを低減している。パネルは図1に示すようなトップエミッション方式を採用している。光3原色が並列に独立して発光するRGB発光層並置フルカラー方式を採用、メタルマスクを使用する真空蒸着で製造する。半透明カソードとアノード電極の間の光の多重反射干渉を利用して、光取り出し効率向上と色純度の向上を図るマイクロキャビティ構造になっている。有機層の膜厚を調整することで、各色が最も強く光るようになっている。外光の反射を低減する対策として、通常の円偏向板の代わりにカラーフィルターを採用している(8)。ソニーは、トップエミッション方式と、マイクロキャビティ構造・カラーフィルターの組み合わせを、独自のスーパートップエミッション方式とよび、ピーク輝度600 cd/m2と高輝度で、100万対1の高コントラストの画像を実現している。価格は20万円で、同じサイズの他のTVに比べて数倍高価であった。 |
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図1 トップエミッション方式有機EL素子の断面構造
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(正面) (側面) |
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世界初の有機ELテレビ 「XEL-1」 |
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(提供:ソニー株式会社) |
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【参考文献】
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