1997年
車載レーザーレーダー用高出力レーザーダイオード量産
(デンソー)
〜個別半導体・他〜


光通信や光ディスクで用いられているレーザーは、2-5μm幅のストライプからレーザービームを出射している。光出力は光出射端面の光学損傷などで制限され、200-300mW程度が上限になる。レーザーストライプ幅を50-300μmに広げると光出力を1-5W以上に向上できる。このようなワット級の高出力半導体レーザーは、固体レーザ励起光源、レーザー加工光源として広くつかわれるようになっている。

ワット級高出力レーザーは、1980年代にXeroxやSpectra diode Lab. のグループを中心に開発が進んだ。エピタキシャル層の厚さ方向には、量子井戸(QW: quantum well)活性層の両側にクラッド層より屈折率の大きい光ガイド層(導波路層)を設ける分離閉じ込めヘテロ構造(SCH: Separate Confinement Heterostructure),水平方向には,電流注入領域(ストライプ幅)を広げたブロードストライプ構造が、高出力半導体レーザーの基本的な構造として開発された。SCH構造にすることによって,活性層の外側への光のしみ出しを大きくして内部の光パワー密度を下げるとともに,電子は活性層に閉じ込めて内部損失を減らして,高い光出力と光変換効率を実現できる。1990年代前半には、レーザーチップ(バー)で数十ワット、レーザーバーをスタックしたもので数百ワット以上の連続発振出力が得られるようになり、国内でも数社が商品化している。

高出力半導体レーザーの大きな課題は、強力なレーザー光によるレーザーミラー面の光学損傷と素子の温度上昇による特性劣化で、これに対していろいろな方策が講じられている。デンソーは出力15WのAlGaAs/GaAsレーザーを開発、1997年よりACC(Adaptive Cruse Control:車間距離制御)システム搭載し、市販乗用車に装備した。車載用として高い信頼性を確保するために、素子劣化の分析を通して、ミラーコーテイングの設計技術、ダイボンデイング技術を開発した。


図1 SCH(Separate Confinement Heterostructure: 分離閉じ込めヘテロ)構造の説明図(2)


図2 モノリシックアレイレーザーバー
(シングルストライプの高出力レーザーを1次元的に並べる)(1)


図3 レーザスタック(レーザーバーを積層)(2)

【参考文献】
(1) 早川 利郎、“高出力半導体レーザーの高性能化技術”、レーザー研究、第28巻、第4号、pp. 203-208、(2004年4月)
(2)瀧川 宏、“光学会の今とこれから  高出力半導体レーザー”
 http://annex.jsap.or.jp/OSJ/50th_cd/main/keyword/koshutu_001.htm
(3) 渥美 欣也、安部 克則、加藤 久弥、道山 勝教、“車載レーザレーダ用高出力レーザダイオード”、デンソーテクニカルレビュー、Val. 9, No.2, pp. 88-94, (2004)

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rev.001 2013/5/9