1981年
動的単一モードInGaAsP/InP DFBレーザー開発
(NTT, KDD)
〜個別半導体・他〜


光ファイバの最低損失波長が1.55μm付近にあることが判り、1.55μm帯で1Gb/sを超える高速で、ロングスパン(50km超)の光伝送が要求されるようになった。当時用いられていたファブリペロー型レーザーは、高速変調をかけると多モード発振になり、上記要求を満足できない。高速変調時にも単一縦モード発振を維持する動的単一縦モードレーザーの開発が世界的に活発になった。

当時検討された手法は、図1に示すような、(1)分布帰還型(DFB)レーザー、(2)分布反射型(DBR)レーザー、(3)複合共振器レーザー、(4)外部回折格子レーザー、(5)注入同期型レーザー、(6)短共振器レーザーであった。欧米では、半導体チップには手をつけない(1)、(4)、(5)が活発に検討されたが、素子製作技術で先行していた日本では、(1)、(2)のモノリシックレーザーの開発が進められた。1981年にKDDの宇高ら, NTTの松岡らが分布帰還(DFB)型、東工大の阿部らが分布反射(DBR)型レーザーの室温連続発振に成功し、モノリシック型が世界の主流になった。動作安定度の観点からDFB型が時分割多重(TDM: Time Division Multiplexing)光伝送用光源として採用され、1987年供用開始のNTT F-1.6G方式の本格運用に寄与した。一方、DFB型は2000年から大展開する波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送の波長可変光源へ発展した。

動的単一モードレーザーは、1.6Gb/s以上の高速変調時に、チャ―ピングと呼ばれる微小な波長変化が生じ波形伝送歪が発生することが判り、チャ―ピング制御が重要課題となった。1988年にNECの小林らは、図2に示すような活性層を多重量子井戸(MQW: Multiplex Quantum Well)さらにはひずみ量子井戸構造にする、DFB-MQWレーザーで大幅にチャ―ピングを減らすことに成功した。また、より本質的な解決法として、1986年にNTTの河村らは、図3に示すような、外部変調器をチップ内に集積化したMI-DFB(Modulator-Integrated DFB)レーザーが開発し、1996年サービス開始のNTT FA-10G システムに採用された。

図1 検討された動的単一縦モードレーザー(1)

図2 分布帰還型多重量子井戸構造(DFB-MQW)レーザの構造略図(2)

図3 変調器集積DFBレーザー(Modulator-integrated distributed feedback laser)の構造(3)

【参考文献】
(1)吉国 裕三、“通信用半導体レーザ研究の変遷と将来展望” 電子情報通信学会論文誌C、vol. J92-C, No.8, pp. 371-381, (2009)
(2) 米田 治雄、町田 豊稔、山腰 茂伸、“WDMシステム用波長ロッカ付レーザモジュール”、FUJITSU, Vol.51, No.3, pp.148-151, (May, 2000)
(3)Kiyohide Wakao, Haruhisa Soda, Yuji Kotaki, “Fujitsu Sci. Tech. J., Vol. 35, No. 1, pp. 100-106, (July 1999)
http://www.fujitsu.com/downloads/MAG/vol35-1/paper12.pdf

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【最終変更バージョン】
rev.002 2015/7/6