1974年
静電誘導トランジスタ(SIT)オーディオ増幅器発売(ヤマハ)
〜個別半導体・他〜


静電誘導トランジスタ(SIT: Static Induction Transistor)は、1950年に東北大・西澤によって発明された、電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)である。SITは、FETのチャネル長を短く、濃度を低めにして、ソースとチャネルの境界のポテンシャル形状でドレイン電流が制御できるようにしたトランジスタである。定量的にはチャネル抵抗rsと真正相互コンダクタンスGmの積が1より小さいことが重要である。前期ポテンシャルはゲート電圧だけでなく、ドレイン電圧の影響も受けるので、SITのドレイン電流はドレイン電圧の増加とともに飽和することなく増加する3極管特性を示す。
ヤマハの持田らは、図1に示すようなnチャネルおよびpチャネルSITを開発した。ドレイン電流―ドレイン電圧特性の一例を図2に示す。これを使用したオーディオ増幅器(B-1)を商品化した。
この増幅器は、オーディオマニアの間では根強い人気があり、2008年2月には、デジタルドメイン(http://www.digital-do-main.com)より復刻版(B-1a)が発売された。
SITはその後、高速動作SIサイリスタなどの電力用デバイスとして発展した。

図1 ヤマハの開発したSITの構造概略と主要諸元(2)

図2 SITの代表的なドレイン電圧-ドレイン電流特性(2)

【参考文献】
(1) J. Nishizawa, T. Terasaki, & J. Shibata, “Field-effect transistor versus analog transistor (Static Induction Transistor), IEEE Trans. on Electron Devices, Vol. ED-22, No. 4, pp. 185-197, (April 1975)
(2) Y. Mochida, J. Nishizasa, T. Ohmi, & R. K. Gupta, “Characteristics of Static Induction Transistors: Effests of series resistance”, IEEE Trans. on Electron Devices, Vol. ED-25, No.7, pp. 761-767, (July 1978)
(3) T. Ohmi, “Power Static Induction Transistor Technology”, IEEE IEDM Digest of Tech. Papers, pp. 84-87, (Dec. 1979)
(4) YAMAHA SIT パワーアンプ B-3
http://audio-heritage.jp/YAMAHA/amp/b-3.html
(5) 2SK76(nチャネルSIT)、2SJ26(pチャネルSIT)
http://vfet.blog.bbiq.jp/blog/cat4743994/index.html


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【最終変更バージョン】
rev.002 2010/10/20