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1969年9月 DSA MOS FET の発明(電総研) 〜個別半導体・他〜 |
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MOSFET の高速・高周波動作には、ゲート長の短縮が要求される。高速・高周波動作を期待すると1μm以下の短チャネルゲートが要求される。ところがこの当時はコンタクト・リソグラフィの時代で最小加工寸法は5-7μmであった。このため、リソグラフィによる加工以外の方法で短チャネルゲートを実現するMOSFET構造がいくつか工夫された。 電総研の垂井らは、バイポーラトランジスタで使われている2重拡散技術、すなわちエミッタ拡散窓からベース層形成用不純物とエミッタ層形成用不純物を同時に拡散して、両不純物の拡散係数差、表面濃度の差、拡散温度、時間を最適制御して、エミッタ層とベース層を同時に形成する技術、を応用するDAS(Diffusion Self-aligned) MOSFETを考案した。n型基板表面のソース拡散窓からp型不純物とn型不純物を拡散してp型層、n型層をつくりp型層の基板表面近傍をMOFETのチャネルに使用する。(図参照)不純物の拡散深さは1μm以下の精度で制御できるので、リソグラフィで加工するよりもはるかに短いチャネル長のMOSFETが実現できる。IEEEでは D-MOST (Double-diffused MOS Transistor)と呼ばれるようになった。 垂井らは、サブミクロンチャネルE-D DSAMOS FET リングオッシレータでtp=1.2ns(tpp=2.5pJ) の高速スイッチングを観測した。また、Signetics のH.J.Siggらはチャネル長1.3μmのDSAMOS FETで,fmax=10GHz, gain=7dB(at 2GHz)を実現した。当時としては画期的な値である。 DSAMOS FET の高速動作は論理LSIとして大いに期待され開発がすすめられた。三菱電機の富沢らは920ゲートE-D型マスタースライスを開発、3nsの動作速度を実現した。しかしその後、リソグラフィ技術が進歩し、CMOSが台頭するとDSAMOSの優位性が失われる。むしろDSAMOSが高耐圧動作に適していることから、電力用MOSFETとして発展している。最近では、最近は1200V耐圧のSiC DMOS FET なども開発されている。 |
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【参考文献】 (1) Y. Tarui, Y. Hayashi, & T. Sekigawa, “Diffusion Self-Aligned MOST: A new approach for high speed device,” in Proc. 1st Conf. Solid State Devices, Tokyo, Japan, (Sept. 1969) (2) Y. Tarui, Y. Hayashi and T. Sekigawa, “DSA enhancement-depletion MOS IC,” IEDM Digest of Tech. Papers, pp. 110, (Oct. 1970) (3) 関川 敏弘、林 豊、 垂井 康夫、“DSA-MOSトランジスタの静特性“、電子通信学会論文誌、Vol. 58-C, No. 9, pp. 509-515, (1975) (4) H. J. Sigg, G. D. Vendelin, T. P. Cauge, & J. Kocsis, “D-MOS Transistor for microwave applications,” IEEE Trans. Electron Devices, Vol. ED-19, pp. 45-53, (Jan. 1972) (5) O. Tomisawa, K. Anami, M. Nakaya, M. Ohmori, I. Ohkura, & T. Nakano, “A 920 gate DSA MOS masterslice,” J. Solid-State Circuits, Vol. SC-13, pp536-541, (Oct. 1978) (6) K. Nakagawa, T. Ashida, H. Takeuchi, & K. Fujii, “A 1000V high voltage p-channel DSAMOS-IC,” IEDM Digest of Tech. Papars, pp. 72-75, (Dec. 1982) (7) Stalter, O. Burger, B. Lehrmann, S. ,”Silicon Carbide (SiC) D-MOS for grid-feeding solar-inverters” 2007 European Conference on Power Electronics and Applications, pp.1-10, (Sept. 2007) |
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【最終変更バージョン】 rev.001 2010/10/09 |