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1957年 エサキダイオード発明 〜個別半導体・他〜 |
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1957年7月にソニーの江崎は、高濃度にドープ(縮退:degenerate)したp型とn型Geの合金接合(階段接合:abrupt junction)の電流-電圧特性を低温(200k)で測定中に、量子論で予想されるトンネル電流成分を観測した。半導体結晶中での量子トンネル電流の最初の発見である。この業績に対して、1973年にノーベル物理学賞が授与された。 このトンネル電流は、pn接合の電流-電圧特性の順方向で、通常の接合電流が流れ始めるより小さい電圧領域に現れる。このため電流-電圧特性は負性抵抗を持つことになり、これは特に高周波発振、増幅、高速スイッチングなどに利用価値が大きい。このため、Ge, Si, InSbなどの化合物半導体で、室温でも負性抵抗をもつダイオードが商品化され、エサキダイオード あるいはトンエルダイオードと呼ばれた。 1960,70年代には、Xバンド、Kuバンド帯の増幅器の開発が盛んに行われ、14-14.5 GHz 増幅器がINTELSAT-V通信衛星に搭載された。しかし、2端子素子なので入出力間のアイソレーションのために、大きくて重いアイソレータを必要とする弱点があり、GaAs FETなど、入出力間アイソレーシュンの良い3端子素子が開発されると、トランジスタ増幅器に置き換わっていった。 |
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図1 トンネルダイオードの動作説明 pn接合の順方向にゼロバイアスから徐々に電圧を印加していくとトンネル効果で電流が流れ、その後負性抵抗領域に入り電流が流れなくなり、さらに電圧を印加すると、また電流が流れるという現象を示す。(3) |
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図2 X-帯プッシュプル・トンネルダイオード増幅器の写真と利得-周波数特性(4) |
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【参考文献】 (1) The Nobel Prize in Physics 1973 Leo Esaki, Ivar Giaever, Brian D. Josephson http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1973/ (2) L. Esaki, “Discovery of the tunnel diode”, IEEE Trans. Electron Devices, vol. ED-23, No. 7, PP. 644-647, (July 1976) (3) 江崎 玲於奈, “トンネルデバイスから超格子へとナノ量子構造研究に懸けた半世紀”、半導体シニア協会誌「Encore」、61巻、(2009年4月) http://www.shmj.or.jp/innovation50/article/ENCORE61_esaki_1.pdf (4) C.W. Lee, “Push-pull tunnel-diode amplifier”, IEEE ISSCC Digest of Tech. Papers, pp. 102-103, (Feb. 1967) (5) P.T. Ho, “Ku-band tunnel diode amplifier for the INTELSAT-V communication satellites”, European Microwave Conference, pp. 601-608, (Sept. 1981) 【移動ページ】 個別半導体他/該当年代へ 【最終変更バージョン】 rev.002 2015/7/6 |