1990年代後半
KrFエキシマレーザーのステップ・アンド・スキャン露光装置
〜装置・材料/リソグラフィ〜
1990年代の主力であったi線縮小投影露光装置(ステッパー)[1]の解像度は0.35μmが限界であり、波長が248nmのKrF光を使用する露光技術が1980年代から研究されていた。1986年にAT&Tおよび松下電器からKrFエキシマレーザーを光源とする実用的なリソグラフィ方式が提案された[2][3]。1987年コマツ(現ギガフォトン)から、また1988年Cymerから、出力が安定しかつ長寿命の半導体用KrFエキシマレーザーが開発され、1980年代末にはニコンやASMLによってKrFエキシマレーザー・ステッパーが開発された。
一方VLSIは微細化とともにチップサイズも大きくなり、リソグラフィでは露光領域(フィールドサイズ)の拡大も求められた。しかし、短波長光に対応する投影レンズの高NA化と大口径化の両立は大幅なコスト高になる。1992年、256MDRAMの共同開発を行っていたIBM・東芝・Siemensはこの両立のために、露光装置メーカーにステップ・アンド・スキャン装置の開発を要求した。この方式は、1973年にPerkin-Elmerから発売されたフォトマスクとウェーハを同時に走査させて露光するミラー・プロジェクション方式の露光装置をベースにして、SVGが4 : 1の縮小投影露光装置に応用した経緯がある。露光はスリットを介して行うため、レンズ径はステッパーの約0.7倍と小さくでき、走査方向のフィールドは大きくとれる。この方式はステップ・アンド・スキャン(スキャナー)と呼ばれた。
1995年、ニコンはKrFエキシマレーザーによるスキャナー(NSR-S201A)をIBMに納入した。
NAは0.6で解像度0.25μm、フィールドサイズは25×33mmであった(図1) 。続いてASMLからPAS5500/300(1996年)、キャノンからFPA-4000ES1(1997年)が発売された。1998年、ニコンは、NAを0.68へ拡大して解像度を0.18μmとし、300mmウェーハにも対応するKrFエキシマレーザー・スキャナー(NSR-S5203B)を発売した(図2)。 エキシマレーザー・スキャナーの時代が到来することになった。
図1 KrFエキシマレーザー・スキャナー NSR-S201A(ニコン提供) |
図2 300mmKrFエキシマレーザー・スキャナー NSR-S203B (ニコン提供) |
【参考文献】
[1]1990年代前半i線縮小露光装置
[2]J.H.Bennewitz etal. IEEE Proceedings IEDM p312 (1986)
[3]M.Sasago etal, IEEE Proceedings IEDM p316 (1986)
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