1990年代

Low-k材料

〜装置・材料/結晶・拡散・成膜


LSIは微細化が進むとともにAl配線抵抗と配線間容量が増加し、信号遅延や配線間クロストークなどが問題になってきた。そのため1990年代後半には、配線用金属にはAlより抵抗の低いCuが、また配線間の絶縁材料はそれまでのSiO2(誘電率k=4.2)より誘電率kの低い材料(Low-k材料)が使われるようになった[1]。絶縁用のLow-k材料は塗布法とプラズマCVD法の両面から検討された。

塗布法は液状材料を回転塗布(スピンオン)して熱硬化させる方法で、凹凸のある配線上に絶縁膜を平坦化形成できる特徴を持つ。1980年代後半に日立化成がSi-Oを主鎖とするシロキサン系の有機スピンオン・ガラス(HSG-R7)を開発した。誘電率kが2.9であり、1990年代にAl多層配線の層間絶縁膜に使用された。1990年代には水素シルセスキオキサン(HSQ)を用いた誘電率kが3前後のAl配線用塗布絶縁材料が各社から開発された。
1996年、ダウ・ケミカルは誘電率kが2.6のアロマティック系樹脂塗布絶縁膜(SiLK)を開発した。SiLKは2000年にIBM、富士通、SonyなどによってCu/Low-k多層配線プロセス[2]に適用され、Low-k材料の有力候補になった。その後、多くのデバイス・製造装置・材料企業のアライアンス(SiLKnet Alliance)が組まれ、SiLKの多孔質化による低誘電率化、CMP平坦化、ドライエッチ加工などのLow-k配線技術の高度化が図られた。

プラズマCVD法によるLow-k膜形成はシリコン酸化物(SiO)にフッ素(F)や炭素(C)を添加する方法が開発された。フッ素添加ガラス(FSG; fluorinated silicate glass)は1990年代の初頭から各社で検討された。1999年にはAMATから高密度プラズマCVD装置[3]を用いたFSG膜を形成する技術が発表された。
炭素添加ガラス(SiOC)の形成法も1990年代後半に登場した。1998年、AMATはダウ・コーニングのトリメチルシランを用いた高密度プラズマCVD法[3]による誘電率k = 2.8〜3のSiOC膜(Black Diamond)を開発した。また1999年、Novellus(現Lam Research)はエアプロダクトのプリカーサを用いたプラズマCVD法によって誘電率k = 2.7のSiOC膜(Coral)を開発した。

塗布法およびプラズマCVD法によるLow-k膜は2000年代以降も改良が続けられ、誘電率kは2前後にまで小さくされた。


【参考文献】
[1]2000年代:配線層間膜のLow-k化進展
[2]1990年代後半:ダマシン法によるCu配線技術の採用
[3]1990年代前半:HDPエッチ&CVD(ECR、ICP)


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