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2020年 1/2型SXGA InGaAs-Si積層 可視-短波長赤外光 イメージセンサー商品化 (ソニー) ~個別半導体・他~ |
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赤外線の中で、波長が0.9㎛から2.5㎛の領域の光は、近赤外線あるいは短波長赤外線(SWIR: Short-Wavelength Infrared)と呼ばれている。SWIRは、比較的可視光に近い性質を持ちながら、肉眼では感知できない。波長が長いため微粒子等による散乱の影響が少なく、霞、煙や薄い紙・布を透過する。皮膚にも数mmの深さまで浸透する。水の吸収(波長:1.45㎛)など、可視光とは異なる物体の吸収・反射特性がある。植生は太陽光のうちSWIRの反射が可視光より大きい。 この性質を利用して、暗視・セキュリティーカメラ、パッケージの内容物や異物の検査、果物の糖度測定、静脈認証・医療検査 リモートセンシングなど、その利用が広まっている。石英ガラスは波長1.3-1.6㎛の光が最も伝搬損失が少なく、長距離光ファイバー通信にはこの波長の光が使われている。SWIRを使用する顔認証機能がスマーフォーンに搭載されるようになった。 SWIRの検出には、感度は波長1.6㎛までにとどまるが、InP 基板上に格子整合した InGaAs 層を受光層とする フォトダイオード(PD)が、低暗電流、量子効率、応答性、信頼性で秀でており、生産性にもすぐれ、非冷却で動作可能なため、広く使われている。InGaAs PDは最初光通信分野で実用になった1)。1970年代後半に、遠距離光通信に使用する石英ファイバーが、波長1.55㎛で損失が最小になるため、1.55㎛波長を発振するInGaAsP/InP系レーザー関連技術の開発が活発に行われた2)。これにより、InP結晶やInPと格子整合する3元・4元化合物半導体結晶の成長技術や材料・加工技術が進歩し、高信頼デバイスが生産性良く製造できるようになった。 1980年代になると、InGaAs PDを使用するリニア―(1次元)イメージセンサー開発が行われるようになった。1987年にThomson CSFは、リモートセンシング衛星SPOT IV に搭載するInGaAs PDを300個並べた 1次元アレイセンサーを開発した3)。1996年にSensor Unlimited Inc.は、16×16画素のInGaAs/InP PDと各画素にスイッチ素子としてのJFETをモノリシックに集積したエリア(2次元)イメージセンサーと開発した。1999年にSensor Unlimited Inc.は、図1にその概略を示すような、厚さを5㎛まで薄くした裏面照射型InGaAs/InP PD 2次元アレイチップを、CMOS読み出し回路を形成したSi基板にフリップチップボンデイングで積層したエリアイメージセンサーを開発した4)。チップ表面の向かい合う電極同士を、やわらかい金属であるInを用いたバンプで接続した。2010年代になると、多画素化が一層進み、SXGA(1280x1024画素)エリアイメージセンサーが、多くの企業で開発された5)。これらはすべて、InGaAs/InP PDチップとCMOS読み出し回路チップとをバンプにより接続する方法を採用している。バンプ形成加工精度の制限により画素ピッチは10-20㎛が最小で、さらなる狭ピッチ化は困難であった。 ソニーは2015年に、画素チップと論理回路チップを、それぞれの表面に形成した3㎛角のCuパッドで直接接続する、生産性、信頼性に優れ、微細加工が可能で狭ピッチ化に適した積層技術を開発し、裏面照射積層型CMOSイメージセンサーに採用した6)。この技術をInGaAs/InP PDチップをウエーハ状態のCMOS論理回路チップにCu-Cu接続で積層する技術に発展させた。これにより、5㎛ピッチで形成した1280×1024画素の裏面照射型InGaAs/InP PDアレイと、CMOS読み出し回路を形成したSiチップを積層する、イメージセンサーの開発に成功し商品化した7),8)。InGaAs/InP PDは、n型InP基板にn-InGaAs層とn-InP層をエピタキシャル成長し、アレイ状に表面からZnをInGaAs層に届くまで拡散し高濃度p層形成することで製作する。受光面になるInP基板は、ダメージフリーのプロセス技術を開発して薄くした。InP基板での可視光の吸収が低減し、可視-近波長赤外光(波長0.4-1.7㎛)の撮像ができる。 |
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【参考文献】
【移動ページ】 個別半導体他/該当年代へ 【最終変更バージョン】 rev.001 2022/3/1 |