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1975~1985年 イメージセンサ用フォトダイオードの改良 (ソニー、日立、NEC、東芝) ~個別半導体・他~ |
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半導体イメージセンサでは受光素子にフォトダイオードが用いられる。1987年、ソニーは現在ピン留めフォトダイオード(Pinned Photodiode)と呼ばれている受光素子(ソニーはこのフォトダイオードをHAD:Hole Accumulation Diodeと呼んだ)を用いた2/3インチ38万画素IT(Interline Transfer)-CCDイメージセンサを搭載した、8ミリVTR一体型ビデオカメラ「CCD-V90」を発表した【1】。 1990年頃になって、パスポートサイズなどの呼称のさらに小型の携帯型VTR一体ビデオカメラの時代になり、小型(1/2インチ型以下)で高画素数(40万画素以上)のCCDイメージセンサが要求されるようになり、 ピン留めフォトダイオードがメーカー各社で本格的にCCDイメージセンサに採用されるようになった【2】。1995年にはKodakによってCMOSイメージセンサにも採用された。ピン留めフォトダイオードはCCD/CMOSイメージセンサ共通の受光素子となった。このピン留めフォトダイオード(別名:埋め込みフォトダイード)の標準化技術は1980年前後のフォトダイオードの活発な改良提案によって確立された。 ピン留めフォトダイオードは図1に示すように、N層全体をP層で覆い、受光面のP層を高濃度P+にしたフォトダイオードである。この構造では、受光面のP+表面が基板電位にピン留めされるため、 1984年にKodakによってピン留めフォトダイオードと命名された。高感度受光、広いダイナミックレンジに加えて、残像の発生もなく、受光表面のGRセンターの影響低下による暗電流・白傷の大幅低減などの特長があり、 イメージセンサ用フォトダイオードとして極めて優れた性能を有する。 1975年、ソニーからPNPトランジスタを受光素子とする提案がなされた【3】。受光部をP+層(エミッタ)にすることにより従来のフォトダイオードのように表面電位を制御するセンサー電極で受光面全面を覆う必要をなくし、 受光感度を大幅に向上さることを目的とした。受光部表面をP+層にするピン留めフォトダイオードの基本となる提案であった。 続いてフォトダイオードの受光面P+層を基板電位にする提案が日立とソニーからなされた。日立からは1977年、表面高濃度P+層をP型基板(ウエル)に接続し基板と同じ電位にピン留めすることで 電荷蓄積容量を増加し、フォトダイオードのダイナミックレンジを広げる構造が提示された【4】。またソニーは1978年、同じ構造のフォトダイオードを用いたFT(Frame Transfer)-CCDイメージセンサを発表した【5】。それを発展させた2/3インチ型28万画素FT-CCDイメージセンサを用いた、VTR一体型カラームービカメラの試作に、世界ではじめて1981年に成功した【6】。 1977年に東芝は、残像低減と受光感度の向上のため、PN接合フォトダイオードの電荷蓄積N層を、完全に空乏化する不純物濃度と厚さにすることを提案した【7】。1980年にNECは、表面高濃度P+層を基板電位にピン留めしたフォトダイオードのN層の電位と、外部回路への転送ゲートの電位の関係を詳細に解析し、 空乏化したN層の電位を転送ゲートのチャネル電位より所要値以上に高く保てるよう空乏化をすすめることで、 信号電荷を完全に転送して残像の発生しない動作原理を提示した【8・9】。このN層電位に注目したピン留めフォトダイオードの動作原理に基づく設計指針が広く研究され、 今日のCCDやCMOSイメ-ジセンサ用のピン留めフォトダイオードとして標準化された。 |
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図-1 IT-CCDイメージセンサの受光部断面構造(表面照射型) |
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【参考文献】 【移動ページ】 個別半導体他/該当年代へ 【最終変更バージョン】 rev.001 2020/11/25 |