共同の実効上げた「超LSI共同研」
「超LSI共同研究所」の玄関口に集結した全所員
超LSIプロジェクトの実質的な推進母体になったのが「超LSI共同研究所」である。同研究所には参加企業5社と電総研から研究員が派遣され、次世代半導体技術としての超LSIの研究に取り組んだ。このプロジェクトは結果的に大成功を収め、内外から高く評価される一方で、日本政府の特定産業育成策(いわゆるターゲッティング)として日米通商摩擦の一大論争点に発展した。
電総研からの出向で研究所長の任にあたった垂井康夫氏の話では、成功要因の1つが「研究テーマの選択を基礎的、共通的な問題に絞った」こと。そのため、微細加工技術、結晶技術といった基礎技術に絞られ、製品化技術に近い設計技術などは省かれた。
もう1つは、これこそ日本的対応というべきだが、「共同は善であるという環境作りに注力した」こと。5社から100人もの研究者が集まると何をやっても試論百出になりかねないが、これら独自の考え方を持った研究者をうまく束ねたら何か新しいものが出てくるのではないか、と逆に考えた。研究所はNEC中央研究所に入居した借り住まいだったものの、1か所にフルタイムに集まって研究に取り組むうちに「同じ釜の飯を食う同窓生意識」(垂井氏)が育まれ、文字通り共同の効用が発揮されることになった。
写真は共同研究所の玄関口に集結した全所員。 (垂井康夫氏提供)