組み立てキットのベストセラー

 
NECが1976年に発売したマイコンキット「TK-80」

 マイクロコンピューターの発明は必然的にパソコン時代を招来したが、その移行過程で出現したのが組み立てキット商品だった。
 なかでも日本市場で絶大な人気を博したのが、NECが1976年に発売したマイコンキット「TK-80」。これはマイコンの組み立てに必要なCPU、メモリー、入出力LSIに加えて入力装置としてのキーボード、出力装置としてLED数字表示装置、それにプリント配線板をセットにしたもので、購入者は手元にハンダごて、ニッパーなどの道具を備え、指示通りに部品を接続していけばよい。
 商品化のいきさつが面白い。当時電子デバイス事業部門担当取締役だった大内淳義氏から聞いた話では、部内から完成品としてキットを売り出そうと提案が出たところ、デバイス部門から異議が出た。組み立てのノウハウや品質管理体制が整っていないのに、ハンダ付けなどのトラブルが出たら対応ができなくなる、というのがその理由。
 それを耳にした大内氏が「それなら完成品としないで部品キットにして売ればいいではないか」と名案をひねり出して決着。
 全国300店に上るマイコンショップ「ビットイン」を通して当時の価格で8万5000円で売り出したら、4年間で6万台が売れた。発売に合わせて結成されたマイコンクラブには1か月間で1万人の会員が集まり、世にいうマイコンブームの先駆けとなった。   (NEC提供)

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