反響呼んだ「イレブン・オー・スリー」
米Intel社が1970年に製品化した世界初の1 kビットMOS型DRAM「1103」のチップパターン
半導体メモリーの開発が進むなかで世界的な話題をまいたのが、米Intel社が1970年に製品化した世界初の1 kビットMOS型DRAM「1103」(写真)だった。同社は68年にFairchildをスピンアウトしたR.Noyce、G.Mooreの両氏によって設立されたばかりの研究開発志向型企業だったが、最初に着手した製品がメモリーチップで、設立1年後の69年には大量生産には至らなかったものの64ビットのバイポーラ型メモリー「3101」と256ビットのMOS型SRAM「1101」を製品化している。
これらの製品に対して1103はキロビット級の容量を持った世界初のダイナミックMOS型メモリーで、価格も10ドルと磁気メモリーに十分対抗できるものだった。最初は半信半疑のコンピューターメーカーも1年も経った頃には次々と主記憶装置への採用を決定、72年には大量生産に踏み切っている。
71年初め、この新製品を引き下げて来日したNoyce氏を囲んで「電子材料」(同年4月号)では座談会を行っている。日本側の出席者が、基本的には半導体メモリーの新規性や革新性に理解を示しながらも実用化の可能性に疑念を示すと、氏は熱っぽくこう語っている。
「メモリーをLSI化すると高速化、高信頼化に寄与するばかりでなく、大容量のものが容易にでき、何よりも低コスト化する。よくて安いものを供給すれば、市場が拡大し、必ず既存の磁気製品に打ち勝つことができる」
その際、氏は大容量化に伴うビット当たりのコストを予言したが、現実にはそれを上回る勢いで低価格化が進んだ。
(米インテル社提供)