最初のNMOSメモリーは144ビット
NECが開発した144ビットNMOSメモリーのチップパターン
磁気コアメモリーから半導体メモリーへ――こんな大胆な転換をやってのけたコンピューターメーカーが、「コンピューターの巨人」といわれたIBMだった。1960年代後半には自社製のチップ(バイポーラ型バッファメモリー)をメインフレームに試験的に組み込んでいる。
そんな状況のなかで、NECは通産省工技院の大型プロジェクト「超高性能電子計算機」の一環として、68年に144ビットNMOSメモリーを開発、日の丸半導体の威力を世界に見せつけた。同メモリーはスタティック型で1セル6トランジスタ構成、サイクルタイムは40
ns。写真は、チップパターンで、寸法は4.3×3.0 mm 。
その当時同社集積回路事業部長の任にあった大内淳義氏は、「大プロでウチがMOSメモリーを担当することになったのが開発のきっかけ。いまでこそメモリーはキロだメガだといっているが、60年代半ばの水準は1ビット、2ビットのチップをつくるのが精一杯。144ビットは3ケタの容量で、世界初のNMOS型メモリーの開発とあって、それなりの代物だった」と打ち明けている。
この成果は、69年2月のISSCCで発表されたが、雪に見舞われたペンシルベニア大学の講堂には続々と聴衆が集まり、通路まで埋める好評ぶりだった。
同メモリーは73年完成の電電公社(現NTT)データ通信用大型コンピューター「DIPS-1」に採用された。
(黒沢敏夫氏提供)