プレーナーICの卓抜な着想

  
写真A(左) プレーナーICを発明した当時のR.Noyce氏  写真B(右) Fairchild社が1961年に商用化した初めてのIC

 時代の歯車が大きく動こうとする時は、見えざる手が作用するのか、人々はその方向へ向けて、いっせいに走り出すものだ。
 米国中南部でJ.Kilby氏がICの基本原理を発表すると、その翌年の1959年には西海岸に設立されたばかりのFairchild Semiconductor社で今日のICの基本技術であるプレーナー技術が生み出された。電極を除いたシリコン基板の表面を特性的に安定なシリコン酸化膜(SiO2)で覆うことによって素子の安定化を図るものだ。
 この技術は、すでに述べたように同社のJ.Hoerni氏によって考案されたものだが、これをICに取り込んだのが同社創設の中心人物R.Noice氏だった。氏の着想が卓抜なのは、SiO2膜を単に表面保護膜に用いるのではなく、素子形成や素子間配線の手段として活用し、高集積化への道を切り開いたことだ。
 Noyce氏はこの技術について、「1つのトランジスタの隣にもう1つのトランジスタをつくったらどうなるかを考えた」と前置きして、「酸化膜で覆われたウェハー表面は機械的・化学的にきわめて安定しており、窓から引き出した電極とつないで、その表面上で自在に金属蒸着配線を施すことができる。いや2つのトランジスタどころか、もっとたくさんのトランジスタをチップ上に並べて一気に複雑な回路ができるはずだ」といとも率直に語っている。
 写真AはプレーナーICを発明した当時のR.Noyce氏、写真BはFairchild社が1961年に商用化した初めてのIC (マイクロロジックシリーズのフリップフロップ回路)。

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