LTPトランジスタでNECに対抗した日立
LTPトランジスタの工業化を推進した日立の技術陣(左から徳山、伴野、柴田昭太郎の各氏)
NECによるプレーナー特許の国内専用実施権の獲得は、同社の長船広衛氏が「同業他社の恨みを買うことになった」(西澤・大内共編『日本の半導体開発』)と告白しているように、さまざまな波紋を生む結果になった。
なかでも日立製作所はその急先鋒で、当時武蔵工場副工場長だった伴野正美氏は、「NECはプレーナー特許の再実施権料0.5%を上乗せして5%払えと突きつけてきたが、そんな無茶な話はない。そんな要求をのむくらいなら自社技術でつくってみせる」と私に不満を洩らしている。
こうして生まれた独自技術が、LTPトランジスタだった。LTPはLow Temperature Passivationの略で、シリコン酸化膜の上に鉛を薄く蒸着し、これを酸素中で加熱してシリコン酸化膜の表面の一部を鉛ガラスとし、素子の表面安定化を図るというもの。
この技術は同社中央研究所の徳山巍氏の考案で、この手法を用いたトランジスタは低雑音、耐水性に優れている利点に加え、パッケージの樹脂封止化を加速することになった。
写真はLTPトランジスタの工業化を推進した日立の技術陣(左から徳山、伴野、柴田昭太郎の各氏)。
(徳山巍氏提供)