写真引き伸ばし機転用の測定器
日立製作所が自製したゲルマニウム単結晶のライフタイム測定器
日本の半導体開発は、材料もなければ装置もない、文字通りの「ないないづくし」から始まった。
米Western Electric社と技術導入契約をしたものの、相手から手渡された技術資料は「トランジスタ・テクノロジー」全3巻だけで、そこに載っている図面や写真を参考にしながら、何とか必要な装置を完成させた。
当時の笑い話に、「この装置の写真をひっくり返すと裏側が見えるとよいのになあ、とつぶやきものです」と、ソニーのトランジスタ開発部隊の中心人物、塚本哲男氏から聞いたことがある。
これは試験機や測定器にしても同じ。写真は1954年当時の日立製作所が自製したゲルマニウム単結晶のライフタイム測定器。光注入法と呼ばれる方法を採用したもので、バルク結晶の表面に逆バイアスの固定針を立て、スリット状に集光した光と針電極との間の相対位置を変えながら、針電極に流れ込む少数キャリア電流の大きさを測定する。
「市販品がないから、上部にある光源は写真の引き伸ばし機を改造して使った。われわれが作成した第1号結晶のライフタイムは7μsだった」とは元同社中央研究所主管研究長の徳山巍氏の話。
(徳山巍氏提供)