「メサ型」が拓いたトランジスタ本格時代
写真A 日立製のドットメサ型トランジスタ
写真B ドットメサ型トランジスタの毎日工業技術賞受賞を記した毎日新聞(拡大可能)
拡散技術で最初に製造されたデバイスはメサ型トランジスタだった。西部劇に出てくる台形の丘をメサと呼ぶように、チップの断面が頂面の平らな台地のような形をしていることから、こう命名さとれた。このトランジスタはゲルマニウムの場合で500MHzと高周波特性に優れ、国産のラジオ、テレビの高性能化に寄与した。
この技術はベル電話研究所で考案され、1957年頃から日本に導入された。従来の合金型やグロン型の技術と組み合わされ、「合金拡散型」(松下電子工業)、「グロン拡散型」(NEC)といったトランジスタが実用化されたが、日立製作所は「ドットメサ型」と呼ぶ独自の製品を市場に送り出した。61年には日本のトランジスタ生産が量、金額ともに受信管を追い抜いているが、これもひとえにメサ型の登場が引き金となった。
写真Aは59年に試作、61年に量産体制を確立した日立製のドットメサ型トランジスタで、63年に毎日工業技術賞を受賞している。写真Bはそれを報じた当時の毎日新聞で、電極接合位置の制御が容易な利点を生かして高周波トランジスタの量産技術を世界で初めて確立したことが高く評価されている。
(日立製作所「武蔵工場20年の歩み」より)