墓石に貼り付けられた25万画素CCD
岩間氏の墓石に貼り付けられた25万画素のCCD
ソニーは1973年、CCDを研究開発の5大テーマの1つに選ぶと、小型CCDカメラを想定した開発を始めている。「5年以内に5万円以内でつくれ」と岩間氏は大号令をかけ、「競争相手は電機メーカーではなく、イーストマン・コダックだ」と開発陣を鼓舞している。
いざやって見ると、感度や解像度の問題で一筋縄には進まない。同業他社は、発明企業のベル研も含めて脱落する。これに対し、ソニーは独自の半導体結晶製造技術「MCZ法」を確立するなどして問題を1つ1つ解消、1978年には画素数を12万画素まで上げた。このチップを採用したカメラ「XC-1」はANAのジャンボジェット機に採用され、離陸時の様子を映し出した。
問題は歩留まりが数百個つくって1個合格と劣悪を極めたことだ。必死の努力の末、問題を克服してソニー国分セミコンダクターで本格生産を開始したのが83年のこと。25万画素のCCDを搭載したカメラ一体型8ミリビデオ「CCD-V8」は2年後の85年1月に発売された。
岩間氏の初志は貫かれたが、氏は82年8月に鬼籍の人になり、この製品を目にすることはなかった。開発に奔走した技術者たちは岩間氏の墓石にそのチップを貼り付けた。 (ソニー提供)