受賞決定前夜の超格子づくり
写真は前掲の「電子材料」特別企画に対する江崎氏の礼状である。冒頭に「翌12月8日には授賞式のためストックホルムへ向かう」と記されているように、文字通り「多忙にまぎれて」の書信だった。それでも5枚の用箋にびっしり書き込まれるあたりに、江崎氏の思いやりの深さと気まじめさを読み取ることができる。
この書信で興味を引いたのは、受賞決定前夜にも、たまたま同僚と夜遅くまで半導体超格子の実験に取り組まれていたこと。それもガリウム・ヒ素とアルミ・ガリウム・ヒ素の組み合わせで初めて100A周期の超格子の作製に成功した、という。
「ノーベル賞記念講演は昔の話をするのが常識ですが、小生のは昔の話に加えてノーベル賞受賞前後の新実験結果を盛り込みました。江崎らしいやり方だと、また笑う人もあるかもしれませんが・・・」と書信の最後を締めくくっている。