国産初のMPUは東芝12ビット機
東芝が開発した12ビットマイクロプロセッサー「TLCS-12」
国産初のマイクロプロセッサーは東芝によって開発された。Intelの発表が1971年11月だったのに対して、東芝のそれは73年5月だから、後追いとはいっても1年半の開きでる。
「TLCS-12」(写真)と呼ばれたこの製品が一風変わっていたのは、その名称が示すように、語長が12ビットだったこと。Intelでは当時すでに8ビット製品「8008」を出し、次は16ビットかといわれているなかでの12ビットだから、なぜと思われても仕方ない。
実は、この新製品開発の裏には、米自動車大手、Ford社の思惑があった。東芝とFordは60年代初め頃から電装品向け半導体の技術開発で交流があったが、Ford側がその実績を買ってか、エンジン制御システムの電子化を持ちかけてきた。折から自動車排ガス規制のマスキー法が成立(1970年)、自動車各社はその対応に追われていた。
これに対する東芝側の回答がエンジンのコンピューター制御化だった。それにFord側が敏感に反応して、10人程度のプロジェクトチームが発足した。同じコンピューターでも当初はミニコンを考えたが、図体が大きい上、100万円オーダーの金がかかる。それを満たす“代役”はないかと考えついたのがマイクロコンピューター化だった。エンジンのような機械制御ともなると4ビットの10倍くらいの機能が必要ということで決まったのが12ビットだった。