半導体ICの商用化で先行したNEC
国産初の商用半導体ICである「μPC1」
米国ではTI、Fairchild両社がICの商用化でも先行したが、日本メーカーで先んじたのはNECだった。
NECでは1961年に入るとICの開発に着手しているが、最初の商用化は63年発売の高周波2段増幅器「μPC1」。エピタキシャルウェハーによる素子分離、液体ソースによる不純物拡散技術などを採用して開発に成功したもので、関係者の証言によれば「特性、製造歩留まりとも申し分なかった」。翌64年には補聴器用アンプの「μPC11」を発売して予想外の売れ行きを示した。
ロジック回路についても64年年央までにDTLファミリーとしてゲート回路3品種を発表、RSフリップフロップ、ハーフシフトレジスター、ハーフアダーなどと合わせて計8品種を製品化、同年8月,米西海岸で開かれた「WESCONショー」に国産初の商用ICとして出展された。DTLファミリーは翌65年に同社製小型コンピューター「NEAC1240」の試作機に導入、量産段階への突破口を開いた。
ちなみに、NECにおけるIC生産量は、1961年50個、62年1万1,800個、63年4,700個、64年1万3,000個、65年3万個と推移し、70年には3,998万個に達している。
写真は国産初の商用半導体ICである「μPC1」。 (黒澤敏夫氏提供)