シリコンでもメサ型健闘
NEC製シリコンメサ型トランジスタ「2SC30」のチップパターン
1960年代に入ると、日本の主力半導体各社はシリコン化を急ぐが、NECが最初のシリコンメサ型トランジスタの開発に成功したのは60年2月23日のこと。ゲルマニウムのメサ型の試作第1号ができたのはその4日前の19日だから双方の開発が並行して進められたことがわかる。
同社にあって半導体開発の先兵的役割を果たした黒澤敏雄氏(後にNECマイクロコンピューターズほかの取締役)は自著『シリコン事始め』(非売品)に「苦労の甲斐があって、その性能は期待した通りにすばらしく、遮断周波数はシリコンが250MHz、ゲルマニウムは700MHzという、従来のアロイトランジスタでは到底望むことのできない程のものであった。関係者一同祝杯をあげて、記念すべき日を祝い、喜びをわかちあった」と記している。
最初のシリコンメサ型は試作名「V1030」と名付けられ、何回か試作を繰り返した後、製品名「2SC30」として登録された。
といっても、最初の生産計画は同年5月20個、6月200個、さらに9月1,000個、10月2,000個といった具合で、「とても量産とはいえないような数量であった。・・・・これらの生産はとりあえず実験室の設備の一部を使用してスタートした」(前掲書)と打ち明けている。ちなみに、当時の大手各社のアロイ型トランジスタの月産量は600万個程度に達していた。
写真は同社製シリコンメサ型トランジスタ「2SC30」のチップパターン。 (黒澤敏雄氏提供)