NECはマイクロ波ダイオードで先鞭
写真A NECにおける開発初期の各種トランジスタ、ダイオードとシリコン単結晶
写真B マイクロ波ダイオードに関する長船氏の研究ノート (拡大可能)
神戸工業、ソニーの先行2社を追うようにして他のメーカーもトランジスタを中核とした半導体の開発・生産に乗り出している。
なかでもNECは長船広衛氏が1949年9月にいち早くトランジスタの研究に着手している。折しも同社は、財閥解体の指定を受けて従業員の首切りを余儀なくされ、ストライキの嵐が吹きまくっていた。そのため、長船氏のせっかくの提案も、「今日のメシが食えないのに、明日のゴチソウの話をするな」と一蹴されている。それどころか、氏の所属していた研究所も一時閉鎖に追い込まれ、真空管工場技術部に籍を移しての開発作業となった。長船氏はその後しばらくの間、同部でトランジスタの研究に取り組むが、それも「研究費なしでよければ」という条件がついた。
NECはトランジスタの研究着手時期では早かったものの、生産の開始は58年にずれ込んだ。ゲルマニウム入手の困難を見越してシリコンに着目、マイクロ波ダイオードの生産を先行させたからだ。氏は生前、「この狙いは当たってNECがマイクロ波でリードする一因になったが、逆にトランジスタで遅れることになった」と私に打ち明けている。
写真AはNECにおける開発初期の各種トランジスタ、ダイオードとシリコン単結晶で、右端のケースの蓋に「トランジスタ累代の墓」という長船氏の直筆が見える。
写真Bはマイクロ波ダイオードに関する長船氏の研究ノート。 (長船広衛氏提供)