天皇陛下に献上された第1号製品

 
写真A(左) 国産初のトランジスタラジオ「TR-55型」
写真B(右) 本格的なポケッタブルラジオ「TR-63型」

 写真Aはソニーが1955年に発売した国産初のトランジスタラジオ「TR-55型」の内部構造。「天皇陛下への献上品」の説明が示すように同社製作の第1号製品で、開発陣の自信と矜持が表出しているように見える。
 ところで、ラジオをトランジスタ化しようとすると、トランジスタが小さいだけでなく、スピーカー、バリコン、トランスなど一般部品の小型化が欠かせない。そこでバリコンはM社、小型スピーカーはF社といった具合に、井深氏自身があちこちの部品メーカーを直接訪問して「もっと小型で高性能のものを」と申し入れた。当初は「ポケットに入るラジオをつくるなんて、気が狂っているのではないか」と反発するメーカーもあったが結局は井深氏の熱意にほだされて、特注品扱いで顧客仕様の製品を提供することになった。
 もっとも、この最初のラジオは、ご覧のようにそれなりの大きさをもったもので、ポケットには入らなかった。本格的なポケッタブルラジオ「TR-63型」(写真B)が発売されたのは、2年後の57年4月だった。
「米国に輸出して大評判になったが、“ポケッタブル”という用語は英語にはないことが後からわかった。それにポケットに入るといってもセールス担当のワイシャツのポケットは少し大きめに仕立てたものです」とは、後年井深氏がそっと洩らしてくれた秘話(?)。 (ソニー提供)

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