青色LEDの工業化で先鞭

 
サファイア基板上に成長させた窒化ガリウム・エピタキシャル層に電極を付けてプローバーで光らせた青色LED

 青色LEDの「研究」のパイオニアが赤崎氏なら、「工業化」で先鞭をつけたのは日亜化学工業である。同社は徳島県阿南市に本社を置く蛍光体材料の国内大手だが、金属ガリウムの精製を手がけていたこともあって、窒化ガリウム半導体の研究に取り組むには好都合だった。
 同社では、1980年代に入ると、有機金属気相成長装置を導入するなどして窒化ガリウム薄膜の生成などに取り組んできたが、90年9月に高品質の窒化ガリウム結晶膜、91年3月には緩衝膜として最適の低温窒化ガリウム膜の作成に成功している。後者は赤崎氏による窒化アルミ緩衝層の開発を一歩前進させ、工業化の有力手段になった。
 さらに窒化ガリウム半導体のP型化についても通常のアニールで可能なことを見いだし、量産化を容易にした。
 日亜化学が1994年11月に製品化した青色LEDは、これらの技術に加えて、発光層に窒化インジウム・ガリウム膜(窒化アルミ・ガリウム膜とのダブルテヘロ構造)を用いて初めて実現したものだ。その光度は従来のものより100倍も明るく、実用化に十分に耐えるものだった。
 名実ともに世界初の青色LEDが誕生した瞬間だった。
写真はサファイア基板上に成長させた窒化ガリウム・エピタキシャル層に電極を付けてプローバーで光らせたもの(1994年当時)。    (日亜化学工業提供)

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