研究活動における「偶然」と「幸運」
ベル研時代にイスラエルからやって来た大学生と話し合う林氏
室温連続発振半導体レーザーの開発に成功した林厳雄氏は、これを機に日本に戻ってNEC中央研究所フェローや光技術研究開発つくば研究所長などを歴任する。
何度か取材に応じていただき、技術論や研究方法論を交わしたが、話が進むうちに熱を帯び、約束の時間がとうに過ぎていた。その時の取材ノートから、いくつかの話を拾うと――。
「私の50年にわたる研究生活には、ずいぶん偶然の要素が働いた。東大の原子核研究所でサイクロトロン発振器の研究をやっているうちに、米国の発達したエレクトロニクスをこの目で見たいという願望が沸き、米国行きを決意した。ベル研ではリサーチ部門のGalt部長の『半導体レーザーの研究をやれ』という鶴の一声で予期せぬ研究に取り組むことになった」
「革新的な発見や発明には幸運が必要だ。でもその幸運をつかめるかどうかには、研究者の資質がかかわっているように思う」
「研究者が10人いれば、そのうちの優れた1人か2人に夢みたいなテーマをやらせておくことが重要だ。問題なのは、優れた研究マネジャーはいても、その上の経営者に先見性を持った人が少ないことだ」
写真はベル研時代にイスラエルからやって来た大学生と話し合う林氏(右端)とPanish氏(右から2人目)。
(林厳雄氏提供)