的中した「日米逆転」の予言
志村が寄稿した「中央公論」1980年6月号の「特別報告・日米半導体戦争」記事 (拡大可能)
米国の衰退、日本の善戦が顕在化するなかで、私は「中央公論」1980年6月号に「特別報告・日米半導体戦争」と題した一文を寄稿している。400字詰め原稿用紙80枚、誌面にして24頁に及ぶ論稿の書き出しは、「仮説・シリコンバレーが崩壊する日」というタイトルになっている。
私が米国半導体産業の行方に危機感を覚えたのは、1つにはFairchildやMostekのような主力企業までが仏資本やコングロマリット企業に身売りするといったように、ビジネスゲーム化の様相を強めつつあったこと、もう1つは品質問題に対する認識の違いを含めて日米の製品格差が目立ってきたことがあった。
こんなことを視野に入れながら、私は「(これまでゴールドラッシュに見舞われた)バレーは再び静けさを取り戻そうとしている。しかし、その静けさは、かつてRachel
Carson女史が描き出した『Silent Spring』の静けさに似ている」と書いた。
当時の出荷額ベースでの米国のシェアは50%強で、日本の40%弱とはまだ開きがあった。が、私の見方が過激に過ぎたせいか、米国の新聞や雑誌からずいぶん取材を受けることになった。そして80年代も終わりに近づくと、私の予言が実証された。