1980年代前半
イオン注入による拡散源形成に移行

〜プロセス技術〜



イオン注入装置では、V族のボロン(B)、X族のリン(P)、砒素(As)などの元素をイオン化し、高電圧で加速し、Si中へ注入する。注入される不純物の量はイオンビーム電流の時間積分で与えられる。注入されたイオンは、Si原子と衝突散乱を繰り返して停止するため、注入深さはイオンの質量と加速エネルギーに依存する。

1970年代にMOSトランジスタの閾値制御やIsolation領域の反転防止のために、中電流のイオン注入装置が使われ始め、1980年代前半にはMOSトランジスタのソース・ドレインなどの高濃度拡散層形成に高電流イオン注入装置が使われ始めた。高濃度の不純物を短時間で注入するためにはイオンビーム電流を大きくする必要があり、中電流イオン注入装置ではマイクロアンペアオーダーであったイオンビーム電流が、高電流イオン注入装置ではミリアンペアオーダーに引き上げられた。

イオンが通過した部分のシリコン単結晶は破壊されているので、その後に熱処理によって回復させる必要がある。熱処理により結晶性が回復されるのと同時に、注入された不純物元素はシリコン格子に入り込み活性化されると共に熱拡散の効果も伴って不純物プロファイルが決定される。イオン注入法の利点は、低温プロセスであること、注入量をモニタできること、それに加えてホトレジストをマスクとして選択的不純物導入が可能であることとシリコン基板内の任意の深さに任意の量の不純物を導入できることである。1980年代初めまでに広く用いられていた熱拡散法は熱でドライブするため、表面濃度、深さ、濃度プロファイルを独立に制御することは困難であり、微細化の進展とともに必要となる浅い接合を形成には限界に来ていた。

本格的量産用高電流イオン注入装置としては、1979年にEATON傘下のNOVAがNV-10を発売、1984年にEATONと住友重機械工業の合弁会社である住友イートンノバがNV-10の国産機を出荷、1985年にはApplied Materialsが全自動機PI9000を発売した。

住友イートンノバ社製NV-10国産機1)

【参考文献】
1) 半導体シニア協会ニューズレターNo.53(’07年10月)
http://www.ssis.or.jp/ssis/pdf/ENCORE53.pdf


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【最終変更バージョン】
rev.001 2013/7/30