2000年代
SoCのシステム規模拡大

~集積回路~



2000年以降、携帯電話やデジタルTV、カーナビなどのシステム規模が増大し、SoCは1000万ゲートから数1,000万ゲートという巨大なものとなった。SoCというハードウェアだけでなくソフトウェアも巨大化したため、このようなシステムを如何に効率的に開発するかということが大きな課題となった。その解決策としてプラットフォーム型の開発手法が発展した。

プラットフォーム型開発という言葉は広く用いられる言葉であるが、半導体ではセットメーカのアプリケーションシステム開発のためのプラットフォームのことを言い、次ぎの2つの開発指針を含む。第一はソフトウェアの開発効率向上のためのハードウェアとミドルウェア、デバイスドライバの標準化である。第二は、ハードウェアであるSoCの開発効率を上げるためのSoCアーキテクチュアの標準化である。つまりSoC開発のためのプラットフォームである。SoCのプラットフォーム型開発の基本的な考え方は、SoCアーキテクチュアの中核をなすCPUとバスを標準化して、I/O(入出力インタフェース)の部分に標準IPを使用することにより共通部分を増やし、異なるアプリケーションに対して最小限の変更でSoCを開発できるようにするというものである。また、携帯電話やカーナビ、デジタルTVなどアプリケーションに特有な部分は専用プロセッサで行い、その専用プロセッサもなるべくスケーラブルにすることにより対応力を向上させるものである。第一と第二の標準化によりアプリケーションシステムに新機能の追加が容易となり、開発期間が短縮できる。

2004年にパナソニック(当時松下電器産業)が発表したUniPhier(ユニフィエ)は、デジタル家電向けの統合プラットフォームとして有名である。UniPhierはCPUとビデオコーデック等を内蔵したシステムLSIと、OSとミドルウェア等から成るソフトウェアプラットフォームで構成される。UniPhierの最大の目標は、ソフトウェア開発効率の向上である。従来は、携帯電話やDVDレコーダ、ホームサーバ、デジタルテレビなど製品群ごとにハードウェアを用意し、その上でマイクロコードやOS、ミドルウェア、アプリケーションなどを個別に開発していた。UniPhier導入により、ベースハードウェアの上に各製品固有なソフトウェアを開発するだけですむようになり、ソフトウェア開発効率を高めることができた。

UniPhierには、高品位AV(高画質、高音質技術集約)、低消費電力(AV機器の長時間動作)、リアルタイム処理(複数のAV処理でもスムーズ動作)、セキュア機構(AVコンテンツ、個人データ保護)などの特徴があり、低消費電力を要求される携帯電話分野、高性能なコーデック処理を要求されるホームAV機器など、各製品分野に最適なLSIを選択できる。

プラットフォーム型開発の今後の課題は、プラットフォームとなるハードウェアやミドルウェア、SoCアーキテクチュアの共用化・標準化を1社の社内だけで進めるか、それとも各社共通の世界標準を目指すかという点である。SoCを使うセットメーカは高級機種用SoCと中級機種用SoCを別の半導体メーカから購入するケースがある。このようなセットメーカの要求を満たすには、一社だけの共通化では不十分であり、世界標準が必要となる。このため、長期的にみると世界標準仕様が徐々に確立され、勢力を拡大していくと考えられる。


図1 UniPhierにおけるソフトウェアアーキテクチュアの共通化 1)


図2 UniPhierにおけるハードウェアアーキテクチュアの共通化 1)


【参考文献】
1) 「UniPhier」 パナソニックセミコンダクター社ホームページ
  http://www.semicon.panasonic.co.jp/jp/news/contents/2011/MN2WS0220/



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【最終変更バージョン】
rev.001 2013/5/9