2001年
FeRAM混載ICカード用LSIの発売 (富士通・松下)

〜集積回路〜



強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric RAM)は、同じ不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)と比較して、書き換え速度が1000倍高速(約100 nsec)、消費電力は10分の1、書き換え可能回数も5桁以上多い(105-107回)など、多くの利点を有する。また、誘電体膜を比較的低温の550℃で形成できるためCMOSプロセスとの整合性も良い。その結果、早くから実用化が進み、非接触ICカードに大量に採用されているほか、システムLSIの埋め込みメモリとして今後市場の拡大が期待されている。

FeRAMの量産技術をいち早く確立したのはロームである。1993年に米国・ラムトロン社と提携し、PZT(Pb(Zrx, Ti1-x)O3) 系、STN (Sr2(Ta1-x, Nbx)2O7) 系の材料を用いて、1996-97年に64Kおよび256Kビットメモリ、および、手荷物用非接触タグLSIの生産を開始した。

富士通は2001年に、0.35μmルールで製造したFeRAMを内蔵するICカード用LSI(写真1,2)の製造・販売を発表した[1]。同LSIは、接触/非接触両用の多目的ICカード用途で、32ビット・RISC型マイクロプロセサ,64Kバイト・FeRAM,96Kバイト・マスクROM,4Kバイト・SRAMを内蔵する。強誘電体材料にはPZT系を、セル構成には2トランジスタ・2キャパシタ(2T2C)型を採用した。

松下電子(パナソニック)も、Y-1と呼ぶビスマス層状ペロブスカイト構造の金属酸化物を用いて、FeRAM内蔵の8ビットマイコン、64KビットFeRAMなどを開発・生産している。

一方、東芝は、チェイン構造による独自のセル配置により、FeRAMとしては最大容量の128Mビット、最高の転送速度1.6GB/secを有するFeRAMを2009年に発表している[2](写真3)。このように大容量化とデータ転送の高速化が実現できたことで、今後は、携帯端末機器のメインメモリーや、小型パソコンなどのキャッシュメモリーとしての利用が見込まれている。

課題は、書き込みによる劣化、高温保持特性の劣化、さらには強誘電体材料の加工などであるが、CMOSロジックの後工程として導入しやすいことは、様々なシステムLSIと組み合わせを容易にしており、この結果、FeRAMはメモリ単体としてのみならず、多様なシステムLSIの実現に向けて今後の成長に大きな期待が集まっている。

写真1.富士通によるFeRAM埋め込みICカード[1] 写真2.富士通によるFeRAM内臓の
ICカード用LSI[1]
写真3.東芝による128MビットFeRAM[3]

【参考文献】
[1] 平成13年8月2日 富士通株式会社 プレスレリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2001/08/2.html
[2] H. Shiga et al., Tech. Dig. of ISSCC, p.464, 2009.
[3] Tech-On記事【ISSCC】東芝が1.6Gバイト/秒の128MビットFeRAM開発,SSDのDRAM代替など狙う
  http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090210/165437/?ST=bbint


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rev.001 2010/10/26