1981年
マイコンのCMOS化

〜集積回路〜



マイコンは、顧客で開発されたソフトウエア資産や開発環境との整合性が重要である。すでに業界標準(デファクトスタンダード)であったIntel社やMotorola社などの米国製品と、ソフトウエアは互換(使い勝手は互換)、ハードウエアは差別化(内部の方式、回路、プロセスは優位技術駆使)という戦略がとられた。めまぐるしく進歩する最新技術をすばやく商品化し産業の歴史を塗り替えてゆく戦略である。たとえば、メモリではCMOSプロセスを採用したSRAMが事業面で大きな成果を挙げた。また、コンピュータの業界でもこれは重要な戦略であった。

日立のHD6301はこのような戦略の元に、電卓や時計など民生用電子機器市場を背景に開発された低消費電力のCMOS技術、コンピュータ事業での技術蓄積をもとにしたマイクロプログラム制御技術などハードウエア面の優位技術を駆使して開発された。当時、半導体事業部門の枠を超えて研究所など日立全社の連携のもとに開発され、1981年に市場投入された。そして、後に開発される不揮発性メモリ搭載も奏功し、当時普及拡大期にあった自動車エンジン制御、FAXやプリンタなどのOA機器、HDDなどのコンピュータ周辺機器等の分野で広く受け入れられた。また、同じ戦略に基づいて、6305系列製品や64180系列製品など多くの製品が開発される先駆けとなった。

図 HD6301Vのチップ写真
(提供:日立)


【参考文献】
(1)H. Maejima et al, “The VLSI Control Structure of a CMOS Microprocessor”, IEEE Micro, vol.3,no.6, 9-19 (1983)


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【最終変更バージョン】
rev.002 2010/10/23