1979年12月-1980年8月
1.3μm帯半導体レーザーの開発(NEC、日立、富士通)
〜個別半導体・他〜


1.3-1.5μm帯でレーザー発光可能な材料系は、InGaAsP/InP系以外に、GaAlSb/GaSb, InGaAlAs/InPなどがあり、材料開発が進められたが、結晶成長の容易さなどから最終的に生き残ったのは、InGaAsP/InP系である。

InGaAsP/InP系では、エネルギーバンド構造の関係から、レーザー発振のしきい電流値の温度依存性が大きい、レーザーの内部損失が大きいなどの課題があった。このため、きわめて細い領域にレーザー発振を限定する埋め込み(BH)構造が発明され、日本のレーザーメーカー(NEC、日立、富士通)はそれぞれの方法でこれの開発に成功した。

BHレーザーは、幅1-2μm、厚さ0.1-0.2μmのフィラメント状のInGaAsP活性層がInP結晶中に埋め込まれた2次元光導波路構造を有する。導波路の大きさが横モード条件を決定するため、特にフィラメントの幅(ストライプ幅)制御が製作上のカギになる。図2にBHレーザーの作成プロセスの一例をしめす。エッチング速度の面方位依存性を利用して、逆三角形状のメサを形成する。エッチング除去部にp型InP, n型InP結晶を再度エピタキシャル成長することで、埋め込み構造結晶を得る。

埋め込み(BH)構造は、動作電流を小さくすることができ、かつ熱放射にも有利なことから、製作プロセス技術が精力的に開発され、実用化に至った。その後、ひずみ量子井戸構造が導入されて、基本特性が改善されるまで活躍した。

図1 InGaAsP/InP BHレーザーの構造(1) 図2 BHレーザーの製作プロセス(1)

【参考文献】
(1) 辻 伸二、中村 道治“光通信用半導体レーザー”レーザ研究、第11巻第6号、pp.422-431(1983)
(2) 伊藤 良一、茅根 直樹、“半導体レーザーの歩みと今後の展開”応用物理、Vol..79, No.6,p 496-501 (2010)


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【最終変更バージョン】
rev.001 2010/10/09