1978年
GaAs/AlGaAs半導体レーザー市販(日立、三菱電機)
〜個別半導体・他〜


GaAs/AlGaAs半導体レーザーは、発光層となるGaAs活性層が、これよりもバンドギャップの大きく、屈折率の小さなp型AlGaAsおよびn型AlGaAs各クラッド層に挟まれた、いわゆるダブルヘテロ構造である。クラッド層間に順方向に通電して活性層にクラッド層から正孔ならびに電子を注入する。これにより、活性層内部でバンド間遷移にともなう発光がおこる。

ところで、厚さ方向には半導体材料ごとに屈折率の差があるのに横方向に屈折率の差がないことから、空間的なホールバーニング現象によって、モードの変形,移動が生じ、レーザーの動作が不安定になり、光出射方向の移動などがおこる。これでは光通信用光源としては不適当で、横の方向にも屈折率の差を設けて、レーザーを安定させる構造が研究された。

三菱電機が考案したTJSレーザーは、半導体レーザーの斜線部分に不純物をしみ込ませ(拡散させ)ると、その先端部分(赤線)の屈折率が高くなり、ピンクの線と赤い線が交わるあたりに厚さ方向だけでなく幅方向にも全反射が起こる領域(活性領域)が生じる。

この構造で単一モード発振し、しきい値電流も15mAと非常に少なく、また100万時間以上の寿命をもつものも作られた。

日立製作所は、溝つき基板型(Channeled Substrate Planar: CSP)、埋め込みヘテロ型(Buried Hetero Structure: BH)と称するレーザーを開発するなど、モード安定化技術では日本はアメリカのレベルを凌駕した。
TJS型レーザーの断面構造(2)


【参考文献】
(1) H. Namizaki, H. Kan, M. Ishii, & A. Ito “Transverse-Junction-Stripe-Geometry double-hetero structure lasers with very low threshold current” J. Appl. Phys. Vol.45, pp 2785-2786 (1974)
(2) 動作が安定なTJSレーザの研究開発―電気のデジタル博物館
http://dbnst.nii.ac.jp/junior/detail/517


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【最終変更バージョン】
rev.002 2013/5/9