2000年代前半

高速昇降温縦型炉

〜装置・材料/結晶・拡散・成膜


半導体の酸化・拡散やLP-CVD等の成膜の熱処理工程には当初から横型炉が使われ[1][2]、1980年代には縦型炉に代わった[3]。横型炉・縦型炉は、いずれも100枚前後のウェーハを石英炉に入れて全体を等温熱処理するバッチ方式である。この方式では、@100枚単位のウェーハが揃うまでの待ち時間が生ずる、A熱容量が大きいために昇降温に長時間を要する。1990年代にSoC(システム・オン・チップ)化による少量多品種型の生産が増え、@の待ち時間が生産性リードタイム短縮の一要因に挙げられた。またAの昇降温時間の長さ(Thermal Budged)が拡散層の微細化の障害になってきた。特にイオン打ち込み層の活性化処理工程ではこの問題が顕在化し、1990年代後半に昇降温時間の短い枚葉型のランプ加熱方式に置き換わった。主としてこの2点から、成膜工程においてもウェーハを1枚ずつ加熱して処理する枚葉式熱処理装置への期待が高まった[4]。1990年代末には全ての成膜・熱処理プロセスを枚葉装置で行うファブが登場した。

その一方で、特に枚葉方式の成膜では成膜速度を高めて生産性を上げる必要がある。高速成膜は反応ガスの供給律速領域で行われるが、この領域では膜厚にパターン密度依存性が生ずる傾向がある。表面反応律速領域で成膜する縦型炉は成膜速度は低いが、100枚規模のバッチ処理で生産性を高める方式であり、同時に凹凸パターンの密度に依存せずに均一な膜厚で成膜可能である。2001年、東京エレクトロンはこの特長を活かして@Aの障害を解消する高速昇降温縦型炉(TEL FORMULA)。バッチサイズを25枚として、さらに高温での発熱可能な金属ヒーターを用い、炉体の熱容量を下げて昇降温時間を大幅に低減させた。従来4〜5時間を要していた酸化・LPCVDのほとんどの成膜工程を1時間前後までに短縮させた。2002年には日立国際電気(現Kokusai Electric Inc.)は100枚バッチの縦型炉(QUIXACE)に高速昇降温方式を採用した。現在の縦型炉ではこの高速昇降温方式が標準となり、用途工程に則した枚葉方式との棲み分けされるようになった。


【参考文献】
[1]1960年代前半:横型拡散炉による熱酸化膜及び気相拡散へ移行
[2]1960年代前半:横型拡散炉
[3]1986年:縦型炉
[4]1990年代:枚葉化装置の量産導入


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